英文契約書を作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語の一つに,Provisions, clauses, particulars, covenants, articlesがあります。
これらprovisions, clauses, particulars, covenants, articlesは,英文契約書で使用される場合,通常,いずれも契約条項を意味します。
例えば,The Distributor shall perform its obligations subject to any provisions hereunder.(販売店は,本契約上のすべての条項に従ってその義務を履行する。)などと使用されます。
ちなみに,restrictive covenants(制限条項)という表現もよく見かけますが,これは,当事者に一定の制約を課したり,一定の行為を禁じたりするものを指します。
なお,契約書の話ではないですが,条約の条項はarticle,法令の条項はsectionと呼称しています。
英文契約書で条文番号を示すときは,Article 1,2,3…とするのが一般的です。
Articleより下の階層の(1)などはParagraphと通常呼びます。
日本語では,契約書上のArticle/Section/Clauseは「条」を指し,Paragraphは「項」を指すことになります。
契約書の条は上記のようにarticleが使われることが多いですが,sectionと呼んだり,clauseと呼ぶこともあるので,絶対のルールがあるわけではありません。
例えば,契約書の10条をArticle 10ということもありますし,Section 10とかClause 10などということもあります。
どの表現を使用しても問題ないですが,混在しないように注意して下さい。
例えば,契約書の条をClauseと表すと決めていたのに,途中でArticleやSectionなどという表現が混在すると,これらが「条」を指すのか,それとも「項」なのか,はたまた「号」なのか,読み手が混乱してしまいます。
そのため,どれを使用しても良いですが,統一的に使用するようにしましょう。
なお,英文契約書中で条項を引用している場合,条項を後で削除したときの番号の「ずれ」に注意して下さい。
例えば,...pursuant to Article 10...(10条に従って)などという内容が契約書の14条に書かれていたときに,9条を削除したとします。
そうすると,条文番号が繰り上げになり,Article 10はArticle 9になります。
これにより,契約書14条の...pursuant to Article 10...は,...pursuant to Article 9に変更しなければなりません。
当然のことではあるのですが,このような条文番号の修正は忘れがちなので注意して下さい。
このような忘れがち,間違えがちな条項の変更を防止するためには,9条を削除するときに9条という条項番号は残し,本文だけ削除するというやり方があります。
Article 9という条項番号は残し,本文を削除した上で,"Intentionally Omitted"と記載するのです。
つまり,Article 9 Intentionally Omitted.と記載して,9条の本文部分のみ削除するのです。
そうすると,9条はもともとあったけれども本契約では削除されたということが明確にわかりますし,...pursuant to Article 10...も10条の条項はずれませんので,そのまま使えることになります。
契約書修正のテクニックとして便利ですので覚えておくと良いかと思います。