英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語の一つに,Shall, willがあります。

 

 Shall, willは,日常用語とは意味を異にし,英文契約書で使用された場合には,通常,当事者が行わなければならない義務を表します。

 

 したがって,shallまたはwillの後に記載された内容を履行しなかった場合には,法的義務を果たさなかったことになり,breach of contractとして,契約違反,債務不履行責任を負うことに繋がるので注意が必要です。

 

 なお,当事者の義務を表す表現としてwillを使用した英文契約書ももちろん存在しますが,実務的にはまだshallのほうが好まれているように思います。

 

 Willは多義的で,未来を表す用語としても使われるため,英文契約書で義務を表したいときはshallを使うか,is obliged to do...などとより直接的な表現を使用することをおすすめしています。

 

 もしwillを使う場合は,義務として使用していることが明確になるように,他の意味と混在して使わないようにするなどの工夫をすることが必要となります。

 

 例えば,The Seller shall deliver the Products to the Buyer on or before 30th of September 2013.(売主は買主に対して本件商品を2013年9月30日までに引き渡さなければならない。)などと使用されます。

 

 当事者の義務を規定する表現は,他にも,the Seller is obliged to deliver..., the Seller has duty to deliver..., the Seller is required to deliver...などがあります。 

 

 Willもそうですが,shallも義務以外の意味も持っており,shallを使用すると,場合によって義務を表すものではないと解釈上の争いを生じる可能性が高まるのであまり使用すべきではないとする論者もいらっしゃいます。

 

 このような論者の方の中は,shallやwillではなく,より義務を表すことが明確な上記のis obliged to..., have duty to..., is required to...などを好んで義務表現として使用するという人もいます。

 

 また,「…してはならない」という禁止表現も,shall not...で表せますが,より明確で直接的な表現として,is prohibited from...を使うべきという人もいます。

 

 Shallについては,他にも,「…ものとする」という意味を表す表現として英文契約書で用いられていることもあります。

 

 例えば,shall be entitled to...(…できるという権利を表す。), shall be permitted to...(…して良いという許可を表す)などです。

 

 ただ,これらは,実質的にはshallが入っている意味はなく,現在形で,それぞれ,is entitled to..., is permitted to...と表しても意味は同じです。

 

 むしろ,後者の表現であるべきだという人もいるので,自分で契約書を作成する場合は,後者のようにシンプルに表現するのが良いかもしれません。

 

 また,繰り返しになりますが,willは通常の用法と同じ,「未来」を表す意味で英文契約書で使われることももちろんあります。

 

 なお,willはshallに比べて弱い義務を表すから使用しないほうが良いという論者もいます。

 

 そのため,このような視点から,義務を表す場合は,shallだけを使用したり,is obliged to do...だけを使用したりするという人もいます。

 

 避けたほうが良い用法があるとすると,前述したように,shallとwillを義務を表す用語として,同じ契約書に混在させることかもしれません。

 

 これをすると,契約書の起草者は同じ義務を表す用語として両方使用していたとしても,shallとwillを使い分けていることに意味があるのではないかという他者の憶測を呼ぶ可能性があります。

 

 つまり,その契約書を作成した人は,ただ義務を表す用語として両者を使っていたのだとしても,相手方は区別されていることに意味があると捉え,willのほうが義務のレベルが低いのだと理解したとします。

 

 そして,相手方は,自分の義務違反について,willが使用されているのであるから,この義務違反は,重大な義務違反ではなく契約解除は許されないなどと主張してくることがあるかもしれません。

 

 英文契約書で,契約解除をするための要件として,些細な契約違反ではだめで,重大な契約違反(material breach)を要求していることがあるからです。

 

 このような無用な主張を招かないためにも,同じ契約書で,同じ意味を表すつもりで,両者を混在させて使用するのはやめたほうが良いかもしれません。

 

 なお,同じ契約書で両単語を使う場合でも,shallは義務を表し,willは未来を表すという用法で使用する分には,そのことが明確に読めるのであれば,問題はないかと思います。 

 

 実務の現場では,必ずしもshallやwill,is obliged to do...,is prohibited from...などを厳密に区別して使用しているわけではないというのも事実です。

 

 そのため,実務的には義務表現をshall,禁止表現をshall notで表せば,シンプルですし,誤解をされる可能性はそれほど高くないかとは思います。

 

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