英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語の一つに,Reasonable endeavors/efforts(リーズナブルエンデバー/エフォート)があります。
これらが英文契約書で使用された場合,「合理的努力義務」と日本語に訳されるでしょうか。
これも当然ですが,訳ではなく,best endeavours(efforts)(ベストエンデバー/ベストエフォート)同様に,実質的意味・中身が問題です。
ちなみに,best endeavours(efforts)(ベストエンデバー/ベストエフォート)についての記事はこちらです。
Reasonable endeavors/efforts(リーズナブルエンデバー/エフォート)は,義務の内容・程度としてはbest endeavoursよりも軽いものです。
英国コモンローでは,このreasonable endeavours(efforts)(リーズナブルエンデバー/リーズナブルエフォート)は,さらに,1) 通常のreasonable endeavoursと,2) all reasonable endeavoursに分けることができます。
1) reasonable endeavoursは,義務履行者の事業上の利益を優先的に考えることが許され,制限的ではあるものの一定のコストを費消して努力義務を履行することが場合によって求められる一方,義務履行者の商業的な利益を犠牲にすることまでは求められないというレベルの義務です(UBH (Mechanical Services) Limited v Standard Life Insurance Co [The Times. November 13 1986])。
他方,2) all reasonable endeavoursは,1) reasonable endeavoursより重いものです。
2) all reasonable endeavoursは,義務履行者の利益を優先的に考えて良いかは明確ではないものの,考慮することは許される傾向にはあります。
しかし,義務履行者は,場合によってコストをかけてまで努力義務を履行することを求められます。
もっとも,そのコスト額は重大なものにはならないというレベルの義務です(Baring Securities v DG Durham Group [1993] EGCS 192)。
また,前出のbest endeavours(efforts)(ベストエンデバー/ベストエフォート)は,上記二者よりもさらに重い義務です。
すなわち,義務履行者の利益を考慮することが禁止されるわけではないが,第一には同義務の履行の提供を受ける者の利益に配慮すべきであり,重大なコストを費消してまで努力義務を履行することが求められるレベルのものです。
これらの説明を見て理解されるとおり,英国コモンローでは,これらの義務は,契約上の義務となることを回避するために努力目標的な趣旨で定められるような代物では到底ありませんので,留意が必要です。
そのため,特に契約書の準拠法(Governing Law)が日本法でもないのに,日本の文化的な感覚で「努力義務」を意味するつもりで安易にbest effortsやreasonable effortsという用語を選定するのは危険ですので避けましょう。
ちなみに,実務的には,commercially reasonable effortsは,reasonable effortsよりもさらに義務の程度が軽いと理解されています。
国際取引では異なる常識,商慣習,法律の下で活動している企業を相手にするのですから,日本の実務をそのまま当てはめて考えるのは間違いですので,そのようなことのないようにしましょう。
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