英文契約書を作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Non-disclosure agreement(NDA)があります。
これは,英文契約書でよく挿入される条項です。「秘密保持契約」を指します。
英文契約書の条項としては,Confidentialityという用語で挿入される方が多いでしょう。
企業が保有する特許,商標,著作権等の知的財産権,ノウハウ,情報などは目に見えない(intangible)ですが全て財産的価値があります。
そのため,ある企業同士が取引関係に入る場合(特に業務委託,製作物供給,請負契約,ライセンス契約,フランチャイズ契約などで重要)には,この価値ある情報をどのような手段,いかなる範囲で相手方に開示するか,いかなる目的・範囲において利用させるか,どのように有体物に記録されている情報を回収するかという問題が重要になります。
要するに,目に見えないが価値ある財産をどうコントロールするかということです。この点について取り決めをせずに,相手方が広範囲に私利を図る目的で当方の情報を利用することを許してしまえば,その逸失利益ないし損失は莫大なものになりかねません。
また,この手の争いは,実際の損害額や相手方の機密情報の利用範囲,利用行為と損害との因果関係などの立証課題と,いかなる種の情報が価値ある情報として機密となるべきかという特定課題のハードルが高いため,予めこれらについて契約書をもって具体的にルール化しておくことは極めて重要でしょう。
機密情報が流出した場合,被害は甚大になる可能性がありますが,一方で損害額の算定が困難であるという特徴もあります。そのため,一部の英文契約書では,損害賠償の予定(Liquidated Damages)により,予め賠償額を定めることがありますが,これは悪用されることもありますので,守秘義務条項については慎重な検討が必要です。
また,秘密情報の範囲が広範すぎたり,表現が曖昧すぎる場合には,秘密保持条項が無効となる場合もありますので,この点にも注意が必要です。