Incurred by...(英文契約書用語の弁護士による解説)
英文契約書を作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Incurred by...について説明します。
これは,英文契約書で使用される場合,通常,「…によって負担された」という意味です。
たとえば,Service Agreement(業務委託契約)などで,受任者が委任業務を行なうにあたり,交通費,出張費やコピー代などの実費を支出するとします。
この費用をどちらが負担すのかを契約書に定めるのが通常です。
したがって,たとえば,The Client shall bear the expenses for... incurred by the Vendor...(委任者は受任者が支出した…のための費用を負担する…)などとして使用されます。
また,「損害を蒙る」という表現でもこのincurred by...がよく使用されます。
例えば,loss or damage incurred by Buyerで,「買主が蒙った損害」という意味になります。
これらの損害を賠償するという表現が後に登場するのが通常です。Buyer shall be entitled to compensation for such loss or damage(買主はかかる損害についての賠償を請求できる)などと表現されます。
類義語としては,SufferやSustainが挙げられます。
Incurと同じように,damage suffered by Party A...などとして損害を蒙るという意味を表す表現としてSufferも英文契約書でよく使用されます。
IncurやSufferなどで表されるこうした費用負担の問題は,たかが実費などと考えていると,契約類型によっては思いのほか高額になることがあるので,事前にきちんと合意して誤解の内容にしておくことが重要です。
また,当然ですが,損害賠償責任についても契約書で明らかにしておくことが大切ですので,IncurやSufferを使用した損害に関する条項が登場したら,納得いく内容かどうか精査しなければなりません。