For the avoidance of doubt/For clarity(英文契約書用語の弁護士による解説)
英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語に,For the avoidance of doubt/For clarityがあります。
これは,通常,英文契約書で使用された場合,「誤解を避けるために記すと/明確にするために記すと」という意味です。
和訳するときは,単に「なお」などと訳されることもよくあります。
「あえて書かなくともそのように読めると思うが,念のために記載しておく」というニュアンスを出したいときに使うことが多い表現です。
例えば,「その契約書の準拠法から当然に導かれる内容なのだけれでも,念のため記載しておくと・・・」というようなときや,「その条項の意味内容から一義的に明らかではあるが,一応言っておくと・・・」というようなときに使われる表現です。
For the avoidance of doubt/For clarityのような文言を入れることにより法的効果に影響するということは通常ありません。
For the avoidance of doubt/For clarityという用語自体に実質的意味があるわけではなく,ただの枕詞ですから,この後に続く文章に意味があることに変わりがないわけです。
このように書いても特に何の効果もないものを「無益的記載」といったりします。
書くことでプラスの効果がある場合を「有益的記載」と呼び,書くことで逆にマイナスの効果を生む場合を「有害的記載」と呼んだりします。
書いても書かなくても効果が特に変わらないのですが,何らかの意図があるのでこうした記載をあえてすることがあります。
For the avoidance of doubt/For clarityは,当該英文契約書の趣旨や方向性を表すという効果もあると言えるかもしれません。
「これらの内容は書かずとも契約の目的・趣旨から当然なのだが・・・」というニュアンスがあるためです。
特に重要な表現とまでは言えないかもしれませんが,登場した時にはそのニュアンスを把握するように努めた方が良いかもしれません。
実質的に意味がある表現ではないですが,こうした表現を使うことで,ドラフトした当事者がどういう理解でその表現を取ったのかを知ることができます。
あえて書かなくても当然だという理解をしているものの,重要なことなので,あえて契約書に明記して注意喚起されている=起草者はそれがかなり基本的で当然のことと理解している=その内容があとで問題になっても記載内容と異なることを主張することはほぼ不可能というように相手の意図を読み取ることができることがあります。
英文契約書も起草者(ドラフト作成者)の意図が表現されていることがあるので,そうした意図も読み取りながら検討するとより深く理解できるようになると思います。