英文契約書の条項の修正例2(Jurisdiction)(裁判管轄条項)

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 英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際によく見るJurisdiction(裁判管轄条項)について,検討の仕方,修正のポイントなどに触れたいと思います。

 

 Jurisdiction(裁判管轄条項)の詳しい内容については,こちらの記事で解説していますので,ご覧下さい。

 

 英文契約書でよく見られる裁判管轄の条項としては,いわゆる専属的合意管轄を特定の国の特定の裁判所に与えるという内容のものです。

 

 例えば,「The parties hereby consent to and confer exclusive jurisdiction upon Tokyo District Court over any disputes arising out of or relating to this Agreement.」とされていたとします。

 

 上記の和訳は「本契約に関して紛争が生じた場合,東京地方裁判所がその解決について専属的な管轄権を有する」となります。

 

 Exclusive(専属的・排他的)とは,指定された裁判所のみが裁判の管轄権を持ち,それ以外の裁判管轄を排除するという趣旨です。

 

 反対語は,non-exclusive(非専属的・非排他的)です。

 

 契約書で,non-exclusiveの管轄権を東京地方裁判所に付与するとされていれば,東京地方裁判所に管轄権を合意により付与するが,それ以外の裁判所の管轄権も排除する趣旨ではないという内容になります。

 

 わざわざ管轄裁判所について合意しているのですから,exclusive(専属的・排他的)と定められていることが多いです。

 

 英文契約書に関して交渉が行われる場合,この管轄条項は,準拠法(Governing Law)紛争解決条項(Dispute Resolution)と並んで,ハードにやり取りされる条項の一つです。

 

 どこの裁判所を選んだら有利なのか,そもそも裁判ではなく,仲裁の方が良いのか,準拠法との関係はどう考えるべきか,などこの種の条項については,悩ましい点が多々あります。

 

 それでは,相手方当事者が自国の管轄に固執した場合,こちらとしてはどのような対策が考えられるでしょうか。

 

 ① Non-Exclusiveに変更

 すぐに思いつく修正案としては,non-exclusiveに変更し,他の裁判所(自国の裁判所)でも訴訟ができるようにするという方法です。

 

 「The parties hereby consent to and confer non-exclusive jurisdiction upon Tokyo District Court over any disputes arising out of or relating to this Agreement.」

 

 上記の条項の和訳は「当事者は,本契約に起因または関連する紛争について,東京地方裁判所が非専属的な裁判権を有することに同意し,これを付与する。」となります。

 

 例えば,上記の例ではなく,カリフォルニア州の地裁を専属的合意管轄裁判所とする旨の条項があったとします。

 

 このような場合に,相手方である日本企業は,上記のようにnon-exclusiveとの条項に変更したとして,日本の裁判所に訴訟提起したらどうなるでしょうか。

 

 この場合,日本の裁判所としては,日本の民事訴訟法等を適用しつつ,国際裁判管轄が当該裁判所にあるかを判断することになるのだと思います。

 

 日本の民事訴訟法では,国際裁判管轄権についていくつか規定を置いていますが,あらゆる場面に対応しているわけではありません。

 

 そのため,このような変更をしても,日本の裁判所で訴訟ができるという保証はないと考えるべきでしょう。

 

 ただ,exclusiveとなっているよりは,non-exclusiveとしておいたほうがその他の裁判所でも管轄権が認められる場面は多くなるでしょう。

 

 ②  被告地主義に変更

 もう一つの対策としては,訴訟を提起する方(原告)が,相手方(被告)の所在地の裁判所で提起しなければならないなどと規定することが考えられます。

 

 例えば,「All disputes which may arise between the parties out of or in connection with this Agreement shall be settled by the district courts located within the city in which the defendant is located.」などとします。

 

 和訳は「本契約に起因または関連して当事者間に生じたすべての紛争は,被告の所在地の都市内に所在する地方裁判所で解決されるものとする。」となります。

 

 訴える側が負担を受けるので,このような規定が良いのかどうかは契約内容などによりますが,自国に管轄を変えることが難しい場合に一つの対処法として考えられています。

 

 日本の民事訴訟法でも,被告の住所地で裁判するというのは基本ですし,最初にどちらかの国の裁判所にしてしまうと,どちらかに有利なってしまうので,このようなフェアな内容に変更するというのは受け入れられやすいでしょう。

 

 ③  仲裁条項などに変更/第三国にする

 他には,そもそも紛争解決を,裁判所ではなく,仲裁(Arbitration)に委ねてしまうことも考えられます。

 

 仲裁条項(Arbitration)についてはこちらの記事でも解説しています。

 

 仲裁地は,国際紛争でよく選択される第三国の地を選ぶということも考えられます。

 

 海外取引,国際取引の紛争解決は,裁判ではなく仲裁のほうがメリット大きいといわれています。

 

 仲裁の利点はいくつかありますが,最も大きいといわれる利点は,ニューヨーク条約の加盟国であれば,民事執行が容易であるという点です。

 

 例えば,シンガポールのSingapore International Arbitration Centre (SIAC)における仲裁などを選択することがありえます。

 

 日本企業でもシンガポールでの仲裁を選択するケースは多く見られます。

 

 上記機関のウェブサイトに行くと,SIACで仲裁をすると合意する場合のモデル条項が掲載されています。

 

 また,仲裁よりは一般的ではないですが,中立な第三国の地の管轄裁判所に管轄権を付与するという場合もあります。

 

 以上のとおり,紛争解決方法,管轄に関する条項は悩ましい問題ですので,交渉の中で慎重にやり取りすることが重要です。

 

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