Sole(英文契約書用語の弁護士による解説)
英文契約書を作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Soleがあります。
これは,英文契約書のうち,Distribution Agreement(販売店契約)やAgency Agreement(代理店契約)などでよく見られる用語で,通常,「単独の」という意味で使用されます。
Distributor(販売店)やAgent(代理店)として指名され,ある地域で,対象製品を販売することを担う際に,販売店または代理店としては,他の業者を販売店や代理店に指名されたくないと考えるでしょう。
なお,Distribution Agreement(販売店契約)とAgency Agreement(代理店契約)との違いについてはこちらの記事をご覧下さい。
その場合に,いわゆる総販売店契約(Exclusive Distribution Agreement)や,総代理店契約(販売総代理店/一手販売店)(Exclusive Agency Agreement)を締結するのが一般的です。
このExclusiveと少し内容を異にするのが,Sole DistributorやSole Agentと呼ばれるものです。
Exclusiveと表記した場合,日本語でいうと「排他的」ということですから,指名された販売店や代理店以外のあらゆるものを排斥する,つまり,当該販売店や代理店以外は一切対象製品の販売を行うことができないことを意味します。
したがって,一般的には,たとえ,製品のメーカーやサプライヤーでも,対象地域内で製品を販売することは禁止されることになります。
指名された販売店や代理店以外というくくりにはメーカーやサプライヤーも入ってしまうので,メーカーやサプライヤーであっても,対象商品を販売地域で販売すれば,exclusive(排他的)という文言に違反することになってしまうということです。
これに対し,Soleというのは日本語でいうと「単独の,唯一の」という意味ですので,約束事としては,販売店や代理店は,指名された者だけだということになります。
つまり,一般的には,メーカーやサプライヤーは,販売店や代理店とは違いますから,対象製品を販売してよいということになります。
メーカーやサプライヤーは,販売店や代理店ではないため,メーカーやサプライヤーが販売地域で対象商品を販売したとしても,指名された販売店や代理店がその販売地域でsole(唯一)の販売代理店や代理店であるという約束事には違反していないことになるのです。
このような違いがあるので用語の使用には注意が必要です。
もっとも,販売条件を定めるのは当事者相互の誤解もある可能性があるので,exclusiveやsoleの意味の違いだけで区別するのはやや危険といえます。
とりわけ,英語圏ではない企業同士が契約する場合,上記のような英語の意味をきちんと理解しているとは限りません。
また,準拠法や管轄裁判所の判例が上記のような意味を導いて解釈するとも限りません。
したがって,exclusiveやsoleという用語を使い分けて終わりにするのではなく,販売権の性質と具体的内容をしっかりと契約書に書き込むことが妥当といえるでしょう。