Passively(英文契約書用語の弁護士による解説)
英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Passivelyがあります。
これは,英文契約書で使用される場合,通常,「受動的に」という意味で使用されます。
このPassivelyは,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)で登場することがあります。
対義語としては,Actively(能動的に)が挙げられます。
例えば,日本企業が販売店(Distributor)となって,海外のサプライヤーから商品を輸入し販売していくという場合を考えてみましょう。
この場合に,日本を販売地域(Territory)として,独占的販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)を結んだとします。
こうなると,海外のサプライヤーは,日本において別の販売店(Distributor)を指名できません。
では,日本の顧客にサプライヤーが直接販売することも禁止されるのでしょうか。
この点については,一般的にExclusive(独占的)の解釈としては,サプライヤーが日本の顧客に直接販売する行為も禁止されていると考えるのが一般的です。
ただし,EUなどでは,EU圏の顧客からEU圏内のサプライヤーに注文が来たのに,サプライヤーが独占的販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)をある販売店(Distributor)と締結しているからサプライヤーは当該注文を拒否しなければならないという内容の条項は無効になるとされています。
このような場合に備えて,サプライヤーが商品を自分から売り込んでActively(能動的に)売るパターンと,注文が来たのでそれに応答してPassively(受動的に)販売するというパターンを区別して禁止行為を契約書に記載することがあります。
具体的には,サプライヤーは,Actively(能動的に)商品を日本の顧客に販売してはならないが,Passively(受動的に)販売することは禁止されないという趣旨の条項を入れることがあり,この文脈でPassivelyが登場することがあります。
こうすると,日本の顧客が海外のサプライヤーに注文した場合,サプライヤーは当該顧客に商品を販売してよい(Passively)が,自ら日本市場に宣伝広告などをして,自分から顧客にアプローチして販売を行ってはいけない(Actively)ということになります。
当然ですが,契約書において禁止行為は重要ですので,どのような行為が禁止されるのか具体的に把握して問題ない内容にするようにしましょう。