Claim for damage(英文契約書用語の弁護士による解説)
英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Claim for damageがあります。
これは,英文契約書で使用される場合,通常,「損害賠償請求」という意味で使用されます。
Claimが日本語でも「クレーム」と言うように「請求」を表し,damageは「損害」を意味しますので,forで繋いで「損害賠償請求」という意味になります。
なお,日本語で「クレーム」というと苦情のようなニュアンスがありますが,英語ではそれはcomplaintという表現のほうが適切です。
よく英文契約書で使用されるclaim for damagesの類義語には,damages(損害賠償)があります。
ちなみに,前述のとおりdamageというのは「損害」そのものを表し,damagesと複数形になった場合「損害賠償(請求)」を意味するのが通常なので,知っておくと良いかと思います。
ただ,damagesと複数形で使用されていても「損害賠償」ではなく,単に「損害」という意味で使用されていることもありますので,ご注意下さい。
Damagesとの表記が「損害」なのか「損害賠償」なのかで大きな問題になることはないでしょうが,契約書の文脈でどちらの意味なのかは把握できるでしょう。
英文契約書が作成される際のバックグラウンドによく採用される英米法では,契約書において約束した内容に当事者が違反した場合に,違反された当事者が受けられる原則的な救済措置(remedy)はこの損害賠償請求(claim for damage/damages)になります。
契約違反をされた場合の第一次的な救済手段はこのClaim for damage(損害賠償請求)であるということは覚えておくと良いかと思います。
その他の契約違反における救済手段としては,①契約の解除請求(Termination)や,②行為の差止請求(Injunctive Relief),③特定履行請求(Specific Performance)などがあります。
これらは契約書に記載された義務に当事者が違反すれば直ちに認められる救済措置ではありません。
日本法では,相手の債務不履行があれば契約解除が法的に認められていますが,英米法下では,必ずしも債務不履行=解除ということにはならないと覚えておくと良いかと思います。
そのため,これらの救済措置も認められるようにするためには,契約書にその旨を明記するといった対策をする必要があります。
Injunctive ReliefやSpecific Performanceなどという用語を英文契約書で見たことがあるかと思いますが,これらは,契約違反をされた際にこのような救済を認められるようにするために記載しているのです。
このように,国際取引では,必ずしも国内の法的な常識が通用するとは限りませんので,契約書にどのような内容を記載するかという点が国内取引と比較にならないほど重要になります。
当然ですが,契約違反の場合の救済措置(Remedy)は非常に重要な内容ですので,英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際には精査する必要があります。