英文契約書の相談・質問集327 個別契約の違反を理由に基本契約を解除できますか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「個別契約の違反を理由に基本契約を解除できますか。」というものがあります。

 

 基本契約というのは,基本売買契約(Basic Sales Transactions Agreement)や販売店契約(Distributorship Agreement)のように,当事者が継続的に取引を続けていくことを前提に,個々の取引に共通して適用される条件を合意している契約のことを指します。

 

 これに対し,個別契約(Individual Contract/Agreement)とは,基本契約を前提に,商品の発注と受注を行い成立する1つ1つの売買取引のことを指しています。

 

 個別契約は,売主と買主が発注書(Purchase Order/PO)と受注書(Purchase Order Acceptance/POA)を交わすことで通常成立します。

 

 では,例えば,買主が売主から商品を100万円で購入するという個別取引をし,期日までに代金を支払わなかったことを理由に,売主は基本契約である基本売買契約や販売店契約を解除することはできるのでしょうか。

 

 この点,基本契約では,通常,「本契約に違反する事実があった場合に本契約を解除できる」と書かれているかと思います。

 

 この「本契約に違反する事実」に個別契約に違反した事実も含まれるかということが問題になります。

 

 形式的に見ると,個別契約の内容は基本契約に書いてあるわけではない(上記の例で言えば「期日までに代金100万円を支払う」という内容は発注書・受注書に記載されていて基本契約書に記載されているわけではない)ですから,個別契約の違反が直ちに本契約=基本契約に違反したことにはなりません。

 

 そのため,個別契約の違反をもって基本契約を解除することができるようにするためには,個別契約の違反をもって基本契約を解除できると明記したほうが安全ということになるでしょう。

 

 もっとも,基本契約の書きぶりから,個別契約が基本契約の内容の一部を構成することが明らかで,個別契約の違反は,個別契約を統制する基本契約の違反を意味すると構成できる場合もあると思います。

 

 そういう場合は,個別契約の違反をもって基本契約の解除に結び付けられることもあるでしょう。

 

 「個別契約の違反が基本契約の違反を構成する」と基本契約に明記されていないからという形式的な理由だけで,個別契約の違反を理由に基本契約の解除ができないと即断するべきではないと思いますが,明確化したいのであれば,そのように記載しておくほうが望ましいと思われます。

 

 とりわけ,海外展開・国際取引を行っている場合,相手は外国に属する企業ですので,お互いの常識や商慣習,法律の内容にギャップがあります。

 

 そのため,自社の認識と海外の取引先の認識がずれていて,個別契約に違反した場合に基本契約を直ちに解除できるかどうかについて,お互いの見解が異なっているということが,国内企業同士のケースに比べて高い確率で生じます。

 

 このような潜在的な認識の差異が,後に大きなトラブルとなって顕在化すると,自社の利益を大きく圧迫することになりかねません。

 

 特に海外企業との紛争処理は,国内企業とのものに比して解決までに時間や金銭のコストがかかることは容易に想像できると思います。

 

 また,紛争を解決する際に参照する法律(準拠法=Governing Law)が外国法になっていると,個別契約と基本契約の関係もどのように考えられているのか,見当もつかないということもありえます。

 

 このようなことのないように,できるだけ契約書で明確にしておきつつ,法律や判例に従って処理される場合にはどのような結論になるのかについてもある程度理解しておくのが望ましいと言えるでしょう。

 

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