英文契約書の相談・質問集343 取引先の社長とはプライベートでも付き合いがあるので契約書は不要ですよね。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「取引先の社長とはプライベートでも付き合いがあるので契約書は不要ですよね。」というものがあります。

 

 ある日本のメーカーが展示会に自社商品を出品したところ,引き合いがあり,日本のメーカーの社長と引き合いをした台湾の会社の社長とが何度か直接会って意気投合し,取引を開始することにしたとします。

 

 実は,この台湾企業の社長は,日本企業の社長が入会している経営塾で懇意にしている人物と仲が良いことも後にわかりました。

 

 台湾企業の社長は,非常に親切で,自宅にも招いてくれて,奥様も含め家族も紹介してくれました。

 

 そして,後日のミーティングで取引条件も細かく話し合い,お互い納得する条件で取引ができるところまで無事話がまとまりました。

 

 日本企業の社長は,こうした人物は信頼できるし,プライベートでの付き合いもできているので,契約書などという堅苦しいものはなくても,信頼関係で取引を行って,お互いにとってメリットの大きい関係が築けると考えていました。

 

 このような場合は,契約書は不要で,信頼関係で取引を行って良いものでしょうかというのが今回のテーマです。

 

 確かに,このようなケースでは,契約書を交わさずとも,取引は開始できるでしょうし,その後もお互いに約束どおりに義務を履行して,良好な関係が続く可能性が高いでしょう。

 

 こうなれば,特にトラブルも生じる可能性は低いですし,もしトラブルが生じたとしても,信頼関係に基づいてトップで協議をすれば解決策も見つかり,合意によって解決できることが多いでしょう。

 

 では,契約書のようなものは不要でしょうか。答えは「否」やはり「必要」です。

 

 理由はたくさんありますが,ここでの大きな理由の一つは,台湾企業の社長がいつまで社長でいるかがわからないからというものです。

 

 体調不良で引退もあるでしょうし,任期が来て交代することもあるでしょう。株主と揉めて解任されることもありえます。

 

 台湾企業の社長自らが大株主だったとしても買収に応じて,会社を売却して買収会社から社長が送り込まれるかもしれません。

 

 経営陣で内紛が起きて,委任状争奪戦(プロキシー・ファイト)に破れ,解任されるかもしれません。

 

 このように,現任の社長に何があるかわからないのです。もし,その社長が退き,新たに就任した社長が前任者の意向を引き継ぐようなタイプではなかったらどうでしょう。

 

 いくら今までの良好な関係を主張しても,契約書がない限り,法的な条件として主張できないものも出てきてしまうでしょう。

 

 今までこのような条件で取引していたと言ってみても,条件変更の申し出は可能ですし,継続的な契約としての約束事もきちんとした形でしていなければ証明が困難です。

 

 また,トラブルになったときに,これまで友好的に話し合いで解決できていたことが急にできなくなるかもしれません。

 

 このように「人」に依存してビジネスをしていると,再現性・継続性の観点から問題が大きいのです。

 

 そのため,契約書のような書面による合意と,証拠化が必要なのです。

 

 契約書が存在していれば,新任の社長に対しても,法的拘束力がある内容として取引条件を守るように主張できます。

 

 また,トラブルが起こった際にも,解決手法が契約書に記載されていれば,そのステップをたどることができますし,最悪法的論争になったとしても,準拠法や裁判管轄の合意が契約書でなされていれば,解決への足がかりとなります。

 

 以上のように,契約書は,継続的に良好なビジネスを維持する観点から非常に大切なもので,「今大丈夫だから」という理由から必要ないと判断してしまうのは早計に過ぎることが多いでしょう。

 

 個人に依存することなく,継続したビジネスとして大きく成長させるためにも,社長が代わろうが,担当者が代わろうが,明確な基準として引き継いでいくことができるように,書面の形に残すようにしましょう。 

 

→next【英文契約書の相談・質問集344】契約書の位置づけは英米と日本では違いますか。

 

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