このサイトをご訪問下さった多くの方は,何らかの事情により弁護士を探されているものと思います。しかし,どのような弁護士が「良い弁護士」なのか,どのような視点で良し悪しを判断すれば良いのかわからないという方もおられると思います。
そこで,良質の弁護士を選ぶにはどのようなポイントに着目すれば良いのかについて私見を記しておこうと思います。弁護士を選択する際に,参考にして頂ければ幸いです。
弁護士が必要になる場面としては,貴社が法律が関わる問題に遭遇したとき,その問題を解決する必要があるという場面が多いでしょう。
そのため,貴社にとって良い弁護士というのは,その問題の分野に精通し,高度の専門性と十分な経験を有する弁護士であると言えると思います。このような弁護士を事前に十分に情報収集して選ばれると良いでしょう。
当該弁護士が専門性と十分な経験を有するかどうかは,次のような方法で知ることが可能です。
例えば,ウェブサイト上のプロフィールを見る,その弁護士の著作を調べ読む,セミナーに参加する,業界の「口コミ」を聞く,利用したことのある他社から評判を聞く,試験的にその分野の法律相談や契約書作成などを一度依頼してみる,などです。
ここでの「コミュニケーション能力」とは,1) 貴社が話したい,相談したい内容によく耳を傾け,的確に貴社が感じている問題点を把握する能力と,2) 貴社が知りたい,聞きたい内容を,わかりやすく丁寧に説明する能力を指します。
この点を意識して,見事なバランスで打ち合わせを仕切ることができる弁護士は同業者からも敬意を払われています。
したがって,反対に,次のような弁護士は,クライアントにとっては良い弁護士とは評価しづらいと考えて良いでしょう。
なお,私がロンドンに留学していた際に,イギリスの弁護士(ソリシター)資格を付与するために設置されているリーガル・プラクティス・コース(LPC)(1年間)のうち一部を学んだことがあります。
日本でも,弁護士資格を得るためには,司法試験合格後に,司法研修所というところで研修を受けなければなりません(私の頃は1年半の期間でした。)が,LPCはその内容とは全く違うものです。
日本の司法研修所のトレーニングでは,裁判実務を中心に教育しますので,例えば,訴状(相手を訴えるときに裁判所に最初に提出する書面)や準備書面(裁判所に提出する法的主張を記載した書面)の書き方,証拠の評価の仕方,証人尋問の仕方などを主として学びます。
これに対して,LPCでは,裁判実務の教育も行いますが,中心的なトレーニングの内容は,法律・判例調査の仕方,意見書の書き方,クライアントに対するインタビューの仕方,クライアントに対するレターの書き方,クライアントに対する口頭での説明の内容・仕方,クライアントに対する報告のタイミング・方法などになります。
このように,教育の視点の多くが,クライアントに向けられているのです。これは,イングランドでは,訴訟対応するのは主としてバリスターと呼ばれる別の資格者で,ソリシターは法的問題を扱うものの,その中心的業務はクライアントとのやり取り,クライアントを代理しての交渉などにあることがその一因となっています。訴訟の必要があれば,ソリシターがバリスターを雇用し,当該ケースについてソリシターからバリスターに説明するなどの流れを辿るのが一般的なのです。
この点,日本の弁護士は,ソリシター・バリスターの両方の業務ができる資格を与えられていますから,本来両方の能力が必要です。しかし,前述したとおり,クライアント対応については司法研修所ではその設置目的に沿わないため十分にトレーニングをしていないのが現状です。(現在では,法科大学院で,一部教えているところがあるとは聞いていますが,期間や内容を聞くにLPCと比べれば十分とは言えない場合が多いでしょう。)
そのため,日本では,当該弁護士に,クライアントに対するこれらのコミュニケーション能力が備わっているかどうかは,その弁護士が弁護士となった後に,どのようなクライアントと接してきたのか,どのような事務所で経験を積んだのか,どのような先輩弁護士に習ったのかなどの要素によるところが大きいと言えます。
したがって,貴社としては,多く弁護士が弁護士になった時点で,既に一定のコミュニケーション能力を研修により鍛えられているという前提を持たず,この点をよく見極めることが重要と言えると思います。具体的な方法としては,最も効果的なのは,試験的に法律相談を受けてみることだと思います。
弁護士費用が弁護士選定の際の一要素になることは指摘するまでもないでしょう。ここで申し上げたいのは,安ければ良いわけではないという点です。
弁護士業務もサービス業の側面がありますから,要するに,サービスの内容・質に合った費用設定であるかが最も重要なポイントになります。
クライアントが弁護士の業務から得られる付加価値が,その弁護士費用に見合うものであるかという視点で検討すると良いでしょう。単に「これだけ時間がかかったから幾ら請求する」というのでは,クライアントが得られる付加価値との検証がなされているとは言いがたいでしょう。
したがって,弁護士事務所の料金体系を複数比較して,単純にこちらの方が安いから良いという判断は,時に「安かろう悪かろう」という事態に繋がりかねないので,慎重に検討されて下さい。
例えば,専門性の高い分野を取り扱っている弁護士や,非常に質の高いサービスを提供する弁護士が,相応の費用を請求するのは,その仕事に見合っている,その金額を払ってでも,その業務の提供を受けたいというクライアントがいるからです。
このような業務を低額の単価で請け負えば,仕事の質を維持できない事態になるかもしれず,それはクライアントが望むことではありません。
したがって,この場合は,対価性が保てていて,このような費用設定をするのは良い弁護士であると判断できるでしょう。この点は,例えば,同じ外食するという場面でも,高級レストランで特別な日に食事をするのと,定食屋でランチを済ませるのとを,単純に料金だけで比較できないということと同じだと思います。
貴社が求めている弁護士業務の内容はどのようなものであるか,それに対し弁護士が提供するサービスの内容・質はいかなるものであるかを把握し,これに見合った費用が設定されているかをよく吟味する必要があります。
サービスの質・内容と,費用の対価性に疑問を持つべき場面は,以下のようなものが挙げられます。
サービスの質については,利用前に判断することは難しいでしょうが,ウェブサイトの内容,著作の内容,セミナーの内容・技術,口コミ・評判などである程度判断することができるでしょう。試験的に小さな案件や法律相談を依頼してみるのも非常に効果的だと思います。
費用がサービスに見合っているかどうかは,口コミ・評判に耳を傾けたり,他の弁護士の費用と合見積りをして比較する方法が効果的です。
なお,私は,合見積りをして頂いて全く構いませんので,見積りをお求めの場合は,こちらのフォームからお気軽にお問い合わせ下さい(見積無料)。
この点は,上記のコミュニケーション能力と重なるところもありますが,重要な点です。弁護士業務もサービス業の一つであるという側面がありますから,クライアントは契約した後に十分なケアを受ける権利があります。
多くの弁護士は,弁護士業務そのもの,例えば,裁判所に対して必要な証拠や相当の準備書面を提出し,法廷に出廷することなどは適切に行なっているでしょうから,これはそのレベルを超えたところでの問題意識です。この点が十分であるかチェックすると良いでしょう。
以下のような場合は,要注意と言えるでしょう。
これらは,仮に弁護士業務そのものの質には問題がなかったとしても,クライアントとしては「良い弁護士」と評価しづらい場面と言えるのではないでしょうか。
十分なケアを施す弁護士かどうかは,ウェブサイト記載のサービスの具体的内容を見る(記載されていることは実行されるでしょう),試験的に契約書作成などの簡単な案件を依頼してみる,口コミ・評判を聞くなどの方法で判断することが有用でしょう。
弁護士は,法律・法務の専門家ではありますが,学者や研究職ではなく,貴社からご依頼を受ける以上,貴社の立場に立って,貴社の利益のために行動するのが原理であると思います。
そのため,多くの弁護士は,常にクライアントの立場に立って,クライアントの利益を代表するよう努めているでしょう。しかし,一部の弁護士は,プライドの高さなどが原因となって,必ずしも貴社の立場に立って物事を考えない傾向にあることを否定できません。
問題があると考えられるのは例えば以下のような行動でしょう。
この点については,次のような方法で,検証し得るでしょう。
例えば,ホームページの理念的な記述を参考にする,セミナーに参加し,人となりを観察する,口コミ・評判を聞く,試験的に法律相談や簡単な案件を依頼してみる,などです。
もちろんまだありますが,重要な点は以上の5点だと思います。あくまで私見ですが,参考にして頂ければ幸いです。
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