英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Remedyがあります。
これは,英文契約書に登場した場合,通常,「救済措置」という意味です。
例えば,相手方当事者に契約違反があった場合に,被害当事者(innocent party)が取り得る対抗手段を定めるときに使用する用語です。
具体的なremedyとしては,例えば,売買契約においては,買主の救済措置としては,履行(目的物引渡し)請求,代金減額請求,代替物請求,修補請求,損害賠償請求,解除などが場面に応じて考えられます。
他方,売主としては,引渡し済み目的物の引き揚げ,代金支払い確保を目的とした引渡し未了の目的物留置(引渡し拒絶),遅延損害金請求などが考えられるでしょう。
英国法下において,remedyはコモン・ローや,エクイティにより様々に定められています。
しかし,英国法においては,救済措置の基本としては損害賠償請求(claim damages)だと考えておいて良いと思います。
重要な契約条項(condition)違反の場合には,契約解除が認められることもありますが,何が重要な契約条項かは,あいまいなところがあります。
したがって,損害賠償以外に,解除などの救済措置も取れるようにするためには,英文契約書でその旨を記載しておくのが良いです。
このように,準拠法にもよるものの,契約違反等の場合における救済手段については,契約書に予め具体的に定めておくことが賢明です。
このRemedyは,例えば,The execution of the right to damages shall not preclude any other remdies...(損害賠償請求権は,その他の救済手段を害しない)などと使用されます。
Remedy(救済措置)について契約書で明確に規定することで,契約違反をしたときの制裁の予測ができるというのもメリットの一つです。
例えば,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)で,商品に欠陥があった場合の救済措置としては,①商品の交換または②代金の減額に限るとしておけば,サプライヤーは,その他の請求を受けることはなくなりますので,立場が安定するというメリットがあります。
このように,Remedy(救済措置)を記載してそれに限定すると契約書で定めておけば,相手方にとっては問題があったときに具体的にどのような救済を受けられるのかが明確化されてメリットがあるのと同時に,救済する側にとっても,ほかの救済措置は求められず,ほかの救済措置については免責を受けられるというメリットがあります。
つまり,双方にとってメリットがあるのです。
もちろん,救済を受ける側は,その救済方法で自社が被る被害を本当に回復できるのかも検証しなければなりません。
契約書に記載された救済方法では被害回復が難しいのであれば,別の救済方法についても交渉する必要があります。
契約違反があった場合の救済方法などは,当然ですが,契約の根幹に関わるほど重要な問題ですので,英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際には,十分に注意する必要があります。