Solicit(英文契約書用語の弁護士による解説)
英文契約書を作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Solicitがあります。
これは,英文契約書で使用される場合,通常,「勧誘する」というような意味で使用されます。
よく使われる条項としては,例えば,業務委託や,何らかの共同事業を当事者間で行うパートナーシップ契約のような契約を締結する場合に,その契約が終了してから一定期間は,当事者は,相手方の従業員等の引き抜きなどをしてはならないというものが挙げられます。
これは,Non-Solicitation(勧誘禁止)条項と呼ばれます。
共同事業などを行うと,相手方当事者に所属している優秀な従業員等のパフォーマンスを目の当たりにしますから,その人材を欲しいという場面も出てきます。
しかし,契約期間中はもちろん,契約が終了した後でも,このような従業員等の引き抜きなどが行われれば,引き抜きをされた側の当事者としては,共同事業の成果を最大化できない可能性がありますし,優秀な人材の流出という損害を被った上,情報を奪われたりするリスクもあります。
そのため,契約が終了しても,一定期間は競業する事業を営むことを禁止したり,互いに相手方の人材には手を出さないということを約束したりするわけです。
後者がまさにnon-solicitation(勧誘禁止)条項で,前者はnon-competition(競業禁止)条項と呼ばれたりします。
このnon-solicitation(勧誘禁止)条項は,当事者の利益を守るために非常に重要な条項の一つです。
そのため,limitation of liability(責任制限)条項の例外としてもよく定められます。
Limitation of liability(責任制限)条項は,当事者が契約違反をして相手方に損害を与えたような場合に,損害賠償責任を負うものの,その賠償額を一定限度に制限するという条項です。
仮にnon-solicitation(勧誘禁止)条項に違反した場合にも,この責任制限が適用されるとしてしまうと,相手方当事者に所属する従業員等を引き抜いたとしても,責任制限で定められた一定の賠償額を払えば済んでしまうということになります。
そうなると,結局責任上限額でその従業員等を「買って」もなお利益を出せるとなると,積極的に勧誘禁止条項に違反して勧誘を行うという事態を招きかねません。
これでは,non-solicitation(勧誘禁止)条項を設けた実質的意味が失われてしまいます。
そのため,non-solicitation(勧誘禁止)条項はlimitation of liability(責任制限)条項の例外とされ,違反があれば,実際の損害額全額を賠償する責任があるとすることが多いのです。