Utmost(英文契約書用語の弁護士による解説)
英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Utmostがあります。
これは,英文契約書で使用される場合,通常,「最大限の」という意味で使用されます。
たまに,英文契約書では,utmostという用語を使って「最大限…しなければならない」という義務が書かれていることがあります。
これは,準拠法(Governing Law)にもよりますが,best effortsのbestと同様の意味で解釈されますので,かなり強い程度の義務を表すことになる可能性があります。
Best effortsの意味についてはこちらの記事で解説しています。
BestとかUtmostという用語は,日本語に訳すと「最大限の」と訳されることが多いので,なんとなくニュアンスとして,「最大限努力をすれば許される」,つまり主観的に最大限努力をすれば義務を尽くしたことになると理解されがちです。
しかしながら,英国などの国では,この程度では義務を尽くしたことにはならず,より強い義務の程度を表すとされています。
そのため,実務上は,「目標を達成するために,一切の可能な努力を行わなければならず,かつ,利用可能なすべての財源を使うことを含む」と解釈される傾向にあるので注意が必要です。
このように,日本語の語感で安易にUtmostやBestという用語を用いたり,受け入れたりすると思わぬトラブルになりますので,注意が必要です。
英文契約書は,基本的に英米法の考え方を基礎にして作られているので,英単語をそのまま日本語に訳しても,実質的な意味を把握できないことがあります。
また,和文契約書にある単語をそのまま英訳しても,自社と相手の理解に齟齬が生じたり,相手が理解できなかったりということが起こります。
したがって,英文契約書を作成するときには,基本的には英米法や英文契約書実務の用語理解が必須になりますので,きちんと理解してから作業するようにしましょう。