海外進出・海外展開をするときに必要になる英文契約書を作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語の一つに,Best endeavours/efforts(ベストエンデバー/エフォート)があります。
これらが,英文契約書で使用された場合,「最大努力義務」とでも訳されるのでしょうが,問題は中身です。
このbest endeavours/efforts(ベストエンデバー/エフォート)英国コモン・ローにおいては,相当に重い義務と解されているので注意が必要です。
日本の実務では,契約上の義務までには昇華させたくないという事情がある場合に,「では,努力目標的なものとして」という意図で,こうした義務を定める場面を見かけます。
義務として契約書に記載することまでは受け入れられないが,努力目標として「最大限努力する」ということであれば承服できるというようなイメージです。
日本語訳としての「最大限の努力」というと,なんとなく主観的に努力を尽くしたと言えれば,努力義務違反=契約違反にはならないと聞こえるのでこのような対応をすることがあるのだと思います。
しかし,英国コモン・ローにおいては,best endeavours(efforts)(ベストエンデバー/ベストエフォート)とは,「reasonable personが当該状況において合理的に可能であると判断されることを行い尽くすこと」を意味するとされています(Pips Leisure Productions Limited v Walton [1980] 43 P & CR 415)。
そのため,国際取引の実務上も,英文契約書で使われるbest endeavours(efforts)(ベストエンデバー/ベストエフォート)は,「目標を達成するために,一切の可能な努力を行わなければならず,かつ,利用可能なすべての財源を使うことを含む」と解釈される傾向にあるので注意が必要です。
これは,決して主観的に努力したと言えれば済むというようなレベルではなく,相当に厳しい義務であることがわかると思います。
したがって,日本の日常的な感覚でこの条項を入れると,準拠法(Governing Law),条項解釈などによっては,自社が考えていた程度の義務では済まず,思いの外コストがかかる重い義務を負っていたということになりかねません。
そうなれば,相手の考えていた努力レベルと自社で想定していた努力レベルに相当に乖離があるということになりますから,後で重大なトラブルになる可能性があります。
そのため,このような努力義務について英文契約書に記載するときには,外国法上の概念にも注意しつつ言葉を選ぶとともに,相手の理解についてもきちんと確認する必要があります。
他に契約書に努力義務としてよく登場する用語は,commercially reasonable endeavours/efforts(商業的な合理的努力)(コマーシャリーリーズナブルエンデバー/エフォート)があります。
こちらのほうがbest effortsよりも程度は軽い義務と解釈されています。
Commercially reasonable endeavours/efforts(商業的な合理的努力)(コマーシャリーリーズナブルエンデバー/エフォート)についてはこちらの記事で解説しています。
※また左側メニュー下のサイト内検索に英文契約書用語を入れて頂くと解説記事を検索できます。
英文契約書の作成・チェック・翻訳・修正サービスについてはお気軽にお問合せ下さい。