中小企業の国際取引・海外進出支援|輸出・輸入・現地法人設立のリスクと対策

▍ 中小企業の国際取引・海外進出支援

 

海外取引・海外展開には,国内取引とは全く異なるリスクが潜んでいます。このページでは,輸出・輸入・現地法人設立の各場面における法務上の注意点と,弁護士によるサポート内容をご紹介します。

 

 

このページで扱うテーマ

輸出による海外展開:輸出入規制・パートナー選定・契約・クレーム・支払いなど9つのリスク

海外製品の輸入販売:代理店・販売店の違い,安全な契約書整備のポイント

販売店・代理店契約のチェックポイント:英文契約書で必ず確認すべき9項目

独資・合弁による現地法人設立:進出形態の選択と国際税務の注意点

 

 

 

 

 

はじめに:こんなお悩みはありませんか

「海外から問い合わせが来たが,契約書が送られてきてどう進めればよいかわからない。海外ビジネスの経験がなく,どこに注意すべきかも不明だ。」

弁護士菊地は,約3年間の英国留学とロンドン法律事務所での実務経験を活かし,国際取引法・英国法・コモンローを専門に長年にわたり取り扱っています。日本企業がアジア諸国をはじめ海外展開・海外取引を行う際の法務面を,実務に即した形でサポートしています。

なお,経済産業省より「中小企業経営力強化支援法に基づく経営革新等支援機関」(認定支援機関)に認定(2012年11月)。また,中小企業基盤整備機構の海外展開支援研修を修了しており,こうした知見も支援に活かしています。

 

 

 

 

 

① 輸出による海外展開マニュアル

輸出による海外展開は,現地法人設立に比べてリスクが低い反面,以下のような多様なリスクが存在します。取引開始前に十分な検討と対策が必要です。

1. 輸出入規制の確認

各国には独自の輸出入規制があり,日本では流通している商品でも特定の国では輸入禁止・制限が課される場合があります。途上国では貿易ライセンスを持つ業者のみ輸入可能という規制も存在します。まず「その製品をその国に輸出・販売できるか」の確認が入口として必須です。

 

2. 輸出事業の展開プロセス

現地パートナーが見つかっても,すぐに製品サンプルを渡してはいけません。以下のステップを踏むことを推奨しています。

事前調査(Due Diligence):財務状況・代表者の信頼性・法的地位・コンプライアンス等を確認

守秘義務契約(NDA)の締結:サンプル提供・情報開示前に必ず締結。違反業者がいるため事前調査との組み合わせが重要

まず単発の個別売買契約から開始:パートナーの実力が不明な段階で長期の販売店・代理店契約を結ぶのは高リスク。実績を積んでから正式契約へ

 

3. 製品クレームへの対処

検収ルール・製品保証の範囲・クレーム申告方法を契約書に明記し,「契約書に定めた方法以外のクレームは受け付けない」と規定しておくことが必要です。

 

4. 製造物責任(PL法)への対処

PLクレームリスクのある製品を輸出する場合,現地のPL法を調査した上で,責任の所在・PL保険の取り扱い・リコール対応方法を契約書に規定しておく必要があります。

 

5. 現地での商標権・特許権登録の検討

日本での商標・特許は現地では保護されません。現地での保護が必要な場合は現地登録が原則必要です。ただし特許は技術情報の公開を伴うため,ブラックボックスがある場合はあえて登録しないという戦略もあります。登録維持コストや侵害対応コストも含めた知財戦略を事前に決めておくことが重要です。

 

6. 支払方法・代金決済リスク

輸出事業で最もリスクが高い部分の一つです。前払いT/T送金・L/C決済が有効なリスクヘッジとされていますが,取引内容や相手の立場上の強さにも影響されます。中小企業では貿易保険が費用面で現実的でないケースもあるため,原価分のみ前払い・残りは納品後など,現実的な落としどころを交渉する必要があります。

 

7. 販売地域(Territory)の設定

独占の販売店・代理店契約を締結する場合は特に重要です。パートナーの実力が不明な段階では,独占権を与えるとしても販売地域を限定的にすることが一般的です。地域指定は独占禁止法・競争法の規制が問題になる場合もあります。

 

8. 更新条項(Renewal Clause)

よくある「更新拒絶通知がなければ自動更新」という条項は,代理店・販売店側の更新期待を高めます。「期間満了で自動終了・延長は書面合意のみ」という条項も選択肢の一つです。パートナーのパフォーマンス次第で契約を終了させたい場合は,更新条項の文言を慎重に検討する必要があります。

 

9. 準拠法・紛争解決方法

日本法・日本仲裁地を勝ち取れたとしても,外国での執行はコスト面で非現実的なケースがあります。逆に外国法・外国仲裁では弁護士費用を負担できないことも。有事の準拠法条項に頼るよりも,代金決済方法の交渉など「トラブル自体を防ぐ」ことの方がはるかに重要です。

 

 

 

 

 

② 海外製品の輸入販売マニュアル

まず少額取引から始め,契約書を必ず整備する

信頼できるパートナーが見つかったら,まず少額取引で信頼性を確認してから本格取引に移るのが基本です。国内取引では契約書なしで継続することもありますが,国際取引では英文契約書の整備が必須です。為替・法制度・政治情勢の変化で仕入れ条件が変わるリスクがあり,契約内容を事前に書面で明確にしておかないと,エンドユーザーへの供給責任を果たせなくなる事態を招きます。

 

代理店(Agent)と販売店(Distributor)の違いを正確に理解する

この区別は非常に重要です。曖昧なまま取引を開始すると大きなトラブルを招きます。

代理店(Agent) 販売店(Distributor)
商品を自分では仕入れず,顧客を探してメーカーに紹介。売上から手数料を受け取る。在庫リスク・売掛回収リスクを負わない。 商品を自己の責任で仕入れ,再販売する。在庫リスク・売掛回収リスクをDistributorが負う。

なお,Sales Representative(レップ)は代理店よりも権限が縮小されたもので,単にメーカーの顧客を紹介する存在です。また,各国の法律により代理店契約には特別な規制が設けられている場合があり,特に解消が困難なケースもあるため注意が必要です。

 

 

 

 

 

③ 英文 販売店・代理店契約のチェックポイント

Distribution Agreement・Agency Agreementは弊所で最も多くご依頼いただく契約書です。以下の9点は必ず確認・交渉すべき重要事項です。

1. 販売店契約か代理店契約かを明確にする

契約書の名称ではなく,契約書の内容によって販売店・代理店のどちらかが決まります。「Agencyだと思っていたらDistributorの義務(最低購入数量・在庫リスク・債権回収リスク)を負っていた」というトラブルは実際に起きています。

 

2. 独占(Exclusive)か非独占(Non-Exclusive)かを明確にする

独占権(総代理店・一手販売店)は代理店・販売店に有利ですが,その対価として最低購入数量・最低売上高が課されることが多いです。輸出者側は独占権を与えるほど自社の販売戦略の自由度が制限されるため,条件設定を慎重に検討する必要があります。

 

3. 販売地域(Territory)の指定を明確にする

独占契約では特に重要です。パートナーの実力が不明な段階では販売地域を限定するのが一般的です。後述する競業禁止の対象エリアとも連動します。独占禁止法・競争法(Competition Law)の規制にも注意が必要です。

 

4. 競業避止義務条項(Non-Competition)のチェック

代理店・販売店が競合品を他から仕入れて販売することを禁止する条項です(サプライヤー保護)。逆に独占契約では,サプライヤーも同地域で他の代理店を指名しない・自ら販売しないという条項(代理店・販売店保護)も競業避止条項の一種です。

 

5. 最低購入数量(Minimum Purchase Quantity)に注意

ノルマを果たせない場合に①契約解除,②独占権の剥奪などが定められることがあります。違反時の効果を必ずチェックし,現実的に達成可能な数字かどうかも慎重に判断する必要があります。

 

6. 再販売価格維持条項に注意

エンドユーザーへの小売価格を維持するよう定める条項は,国によって独占禁止法違反に問われることがあります。国ごとの法規制を事前に確認することが必要です。

 

7. 秘密保持条項(Confidentiality)を入れる

取引を通じて相手方に開示した財務状況・販売実績・顧客情報などを第三者に漏示しないと定めることが一般的です。これを怠ると,開示した機密を相手方が自社利益のために利用するリスクがあります。

 

8. 契約期間と更新条項

代理店・販売店は長期契約を望む傾向がありますが,サプライヤーはパフォーマンス次第で契約を終了できる柔軟性が必要です。①更新条項を入れない,②更新後期間を短く刻む,③中途解約条項(Termination with/without cause)で調整する,などの対処が実務上行われています。

 

9. 契約解消時のGoodwill補償条項

代理店・販売店がコストをかけて開拓した販路・ブランド力(Goodwill)に対し,契約解消時に補償を求めるクレームが多く発生します。サプライヤーとしては「No Compensation for Goodwill」を明記することが重要です。また,現地法によってサプライヤーの契約解消が制限される場合があるため,事前の現地法調査が必要なケースもあります。

 

 

 

 

 

④ 独資・合弁による現地法人設立

輸出入よりリスクが高い進出形態

独資・合弁による現地法人設立(子会社・支店含む)は,輸出入取引による海外展開よりリスクが高いといえます。近年はASEAN統合を睨んだシンガポール進出や,アジア新興国への進出が目立ちます。

 

進出前に確認すべき事項

現地法規制の調査:独資による子会社設立が可能か,支配比率など現地会社法の内容

国際税務の知識:移転価格税制・タックスヘイブン・配当益金不算入・PE(Permanent Establishment)・租税条約など。これらを理解せずに進出すると,現地で利益が出ても国内に十分還元できない事態になります

会社設立形態での海外進出は,現地のアドバイザーも含めた適切な専門家チームによる慎重な検討が不可欠です。

 

 

国際取引・海外進出に関する英文契約書の作成・リーガルチェック,または進出形態の法務相談についてはお気軽にご相談ください。契約書を添付いただければ,見積は無料,当日〜翌営業日以内にご回答します。

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