AIによる英文契約書チェック・レビューとの違い(弁護士にしかできないことは何か)

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 ① AIによるレビュー/審査について
 
 リーガルテックの発展は目覚ましいものがあり,法務部門の「作業」も効率化が進んでいます。
 
 AIによる契約書レビューも最近はレベルが向上し,ソフトによっては使えるものもあるというレベルになっていると思います。
 
 
 ただ,そもそもの前提ですが,弁護士向けではない,一般企業向けのAIによる契約書のレビュー/審査サービスでは,契約書のリスクについて表示したり,修正案を提示したりすることが禁止されています。
 
 
 なお,この禁止内容は弁護士(法律事務所)ではない行政書士など(法務事務所など)による契約書のレビュー/チェックでも同じで,上記のような視点での行政書士によるレビューは禁止されている(行政書士にこのようなレビューをしてもらっても使えなくなってしまう)ということになるかと思いますのでご注意ください。
 
 
 あくまで弁護士以外のAIなどによるレビューは,具体的なケースを想定した契約書の作成ではなく契約書の定型的な雛形を提示したり,具体的な契約書の文言を修正することなく定型的な内容の類似条項を提案したりするということが許されるにとどまっています。 
 
 
 そのため,具体的なケースを想定しての契約書レビューとしては使えないということなってしまいます。
 
 
 この点は弁護士法72条による規制のためです。詳しくは法務省「AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係についてというガイドラインを発表しているのでご参照ください。
 
 
 なお,弁護士と行政書士の契約書業務の違いについては,こちらの弁護士会の記事などを参考にされ,ニーズに合わせてご依頼ください。
 
 
 話を戻しますと,AIによる契約書レビュー/審査は,機械によるものなので,重要な条項の抜けがないかをチェックしたり,各条項の有利・不利をもれなく判別したりするには,うっかりミスをしがちな人間より格段に優秀です。
 
 
 もっとも,機械であるが故に,逆に現場に即した柔軟な修正案の作成することなどは難しいと言えます。 
 
 
 一言で説明するなら,一般論で済むような取引であればある程度利用価値があるものの,現場を意識した実務で「使える」契約書にするには,AIレビューだけでは難しい傾向にあると思います。 
 
 
 現場にいるのは,ときに不合理だったり,理解が不足していたり,感情的だったりする人間であるため,いつも機械が提案する合理的な内容で契約交渉が進むものではないというのが1つの理由です。
 
 
 例えば,取引金額が少額で,相手が出してきた雛形が薄い内容なのに,AIが提示した自社に有利な条項をすべて飲ませることが非現実的なのは,実際に契約交渉の経験がある方なら容易に想像できると思います。
 
 
 また,その取引で相手が提示している条件が,この種のこのレベルの取引として合理的なのかどうかという個別具体的な判断もAIでは難しいです。
 
 
  例えば,「一般的には不合理であるものの今回は個別の事情から受け入れ可能(または不可能)」という判断などがAIでは行いにくいです。
 
 
 AIによる契約書レビューは,データベースに基づいた判断ですので,その契約類型において一般的に不合理であれば,すなわちその契約書も不合理だと結論づけられてしまうからです。
 
 
 さらに,その契約で最後までこだわるべきところはどこなのか,どこを相手方に譲ってその代わりにどこを守るべき・飲ませるべきなのかなど,実際の契約交渉を意識したアドバイスなどはしてくれません。
 
 
 例えば,取引先が,AIが提案したとおりの自社に有利な条項の修正を受け入れてくれないとします。
 
 
 このような場合に,AIでは,ベストではないがギリギリ取引先に受け入れられるような条項案を再提案したり,法律面だけではなくビジネスとしてのメリット・デメリットを意識して取引先に受け入れらやすいような説明文を用意したりすることは,残念ながらできません。
 
 
 とりわけ,海外取引においては,現地の法律・商慣習・文化が日本のそれとは異なるため,日本の契約書のような有利・不利の判断や,常識的な取り決め内容というのがそのまま通用しません。
 
 
 また,企業間取引であっても,相手の外国企業の担当者や決裁権者は人間ですから,法律・商慣習・文化や考え方が大きく日本人とは異なる人間を最終的に説得しないと契約締結はできません。
 
 
 こうした事情があるため,特に海外事業・海外取引では,AIによる条項提案やその説明だけでは現場はうまく回らないことが多いです。
 
 
 やはり,現実には,単なる数字上のデータには現れない上記のような「交渉術」や「交渉テクニック(数値化できない知見や経験の部分)も関わってきてしまいます。
 

 結論としては,AIは一般的な観点から,条項の漏れがないかをチェック(この点は人間よりも格段に優れています)したり,条項の有利不利を理解したりという点で使用するにとどめ,具体的なその取引に即した内容にしたり,交渉現場に使える契約書に修正したり,交渉での説明内容を考えたりするのは人間が行うべきだと思います。

 

 つまり,あくまで人間の最終的な判断の基礎的なサポートにAIを利用するのが現段階のレベルでは適切だと思っています。

 

 ② AI(機械)翻訳について

 AIレビューと同じように,よく質問を受けるAI(機械翻訳)については,最近は精度も高くなってきていますので,英文契約書の概要を把握するため,あくまで参考のために和訳するという目的で使用するのであれば問題ないと思います。

 

 ただ,和文で作成した契約書や条項を機械翻訳でそのまま英訳して契約書にしたり,逆に英文契約書の内容を機械翻訳で和訳してそれをそのまま(英文契約書と同一の内容という前提で)和文契約書として利用したりすることはおすすめしていません。

 

 なぜなら,その機械翻訳が契約書の条項としてきちんと効力を持っているか,適切な内容になっているかという点が検証されていないからです。

 

 契約書は当事者の権利義務を発生させるなど,重要な機能を持っていますので,この部分の検証は必須です。

 

 逆に言うと,機械翻訳後に上記検証を顧問弁護士や法務部にて対応できるのであれば問題ないかと思います。

 

 弊所でも必要に応じて機械翻訳を活用しています。これにより弁護士費用を抑えることが可能になっています。

 

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