プレビュー:英文 Non-Solicitation Agreement(不勧誘・引き抜き禁止契約書)

英文 Non-Solicitation Agreement(不勧誘・引き抜き禁止契約書)の作成・リーガルチェック・翻訳

Non-Solicitation Agreement(不勧誘・引き抜き禁止契約書)は,①自社の従業員・役員を他社に引き抜くこと,②自社の顧客・取引先に働きかけて取引関係を奪うことを禁止する契約書です。雇用契約の退職後条件,M&A・業務提携・業務委託契約の付帯条項として広く用いられます。競業禁止(Non-Compete)とは異なり,競合他社への転職・就業そのものを制限するのではなく,人材・顧客の「引き抜き行為」を禁止する点が特徴です。禁止期間・対象者の範囲・合理性を適切に設計しないと,各国で無効と判断されるリスクがあります。

こんな企業・方からのご相談をお受けしています

退職者・元従業員による従業員の引き抜きを防ぎたい

退職した幹部・従業員が自社の優秀な人材を次々と引き抜いている。雇用契約書・退職合意書に実効性ある不勧誘条項を盛り込みたい。

M&A・業務提携で相手方への不勧誘条項を設けたい

M&Aや業務提携・合弁契約において,相手方が自社の従業員・顧客に接触することを禁止したい。取引終了後も一定期間,不勧誘義務を継続させたい。

業務委託・フリーランス契約に不勧誘条項を入れたい

外部委託先・フリーランスが自社顧客に直接営業をかけることを防ぎたい。業務委託契約・コンサルティング契約に顧客引き抜き禁止条項を適切に設けたい。

相手方のNon-Solicitation条項が広すぎる

相手方から届いた契約書のNon-Solicitation条項が対象・期間・地域ともに広範すぎる。自社のビジネスに支障が出ない範囲に修正・交渉したい。

契約締結時に弁護士がチェックする主要条項

不勧誘条項は範囲・期間の設計次第で有効性が変わります。以下の条項は特に慎重な検討が必要です。

① ⚠ 禁止行為の定義(Employee Solicitation / Customer Solicitation)

Non-Solicitation が禁止する行為を明確に定義することが最重要です。主に①従業員勧誘(Employee Solicitation):相手方の従業員・役員・契約社員等を採用・引き抜く行為,②顧客勧誘(Customer Solicitation):相手方の顧客・取引先・見込み客に営業をかけ取引関係を奪う行為,の2種類があります。どちらを,またはその両方を禁止するのかを契約書上で明確にしてください。「勧誘(Solicit)」の定義が曖昧だと,自然発生的な接触(相手方から先にコンタクトしてきた場合等)も制限されるリスクがあります。

② ⚠ 禁止対象者の範囲(Covered Persons)

誰を引き抜いてはいけないのか,その対象者の範囲を具体的に定めます。「全従業員」なのか,「在職中に接触した従業員」なのか,「特定の部門・役職者」なのかによって有効性が大きく変わります。範囲が広すぎると,裁判所により合理性を欠くとして無効とされるリスクがあります。顧客勧誘禁止については,「契約期間中または直前●年以内に取引があった顧客」などと合理的に限定することが重要です。

③ ⚠ 禁止期間(Restricted Period)

不勧誘禁止の期間を明確に定めます。雇用終了後・契約終了後の期間として,通常6ヶ月〜2年程度が設定されることが多いですが,国・業種・役職・禁止行為の性質によって合理的な期間は異なります。期間の定めがない不勧誘条項は無期限の制限とみなされ,公序良俗違反(日本法)や不合理な取引制限として無効とされるリスクがあります。禁止期間の起算点(雇用終了日・契約終了日・特定のイベント発生日等)も明確に定めてください。

④ 競業禁止(Non-Compete)・秘密保持(NDA)との関係

Non-Solicitation は Non-Compete や NDA と組み合わせて規定されることが多いです。Non-Compete(競業禁止)は競合他社への転職・就業・起業そのものを制限するのに対し,Non-Solicitation は競合他社に転職した後も「引き抜き行為」を禁止するものです。Non-Compete が無効とされても Non-Solicitation は有効とされる場合があります(Severability)。各条項の独立性と相互の整合性を確認してください。

⑤ 違反時の救済手段(Remedies for Breach)

不勧誘条項に違反した場合の救済手段として,①差止命令(Injunction):違反行為の停止を裁判所に申し立てる,②損害賠償(Damages):実損害の賠償請求,③違約罰(Liquidated Damages):損害額の立証が困難な場合に備えた事前の損害額の合意,が一般的です。「金銭賠償では回復不能な損害を被る(irreparable harm)」として差止命令を申し立てる権利を明示しておくことで,緊急時の法的対応が迅速になります。

⑥ ⚠ 有効性の要件―合理的制限(Reasonableness)

日本・英国・米国・EU諸国いずれも,不勧誘条項が有効であるためには「合理的な制限」であることが求められます。禁止対象者の範囲・禁止期間・禁止行為の具体性が合理的かどうかが審査されます。日本法では公序良俗違反(民法第90条)で無効とされる可能性,英国・EU法では取引の自由の制限として無効とされる可能性があります。代償措置(金銭的補償)の提供が有効性を高める場合もあります。

⑦ ⚠ 各国での有効性の違い(Governing Law)

Non-Solicitation の有効性・執行可能性は準拠法によって大きく異なります。米国では州法によって差があり,カリフォルニア州などは従業員の不勧誘禁止条項を原則無効とする厳しい規制があります(2024年以降さらに制限強化)。英国では合理性審査が厳しく,過度な制限は Blue Pencil Rule(部分削除による救済)の対象になります。日本法では制限の合理性・代償措置の有無が重視されます。準拠法の選択と現地法の調査が不可欠です。

⑧ 独立性条項(Severability)

不勧誘条項の一部が無効・執行不能とされた場合でも,契約書の他の条項の効力に影響を与えないとする独立性条項(Severability Clause)を設けることが重要です。裁判所によっては,過度な制限の一部のみを削除または修正して残りの条項を有効とする(Blue Pencil Rule)場合があります。Severability と合わせて,「裁判所が合理的と判断する範囲で修正・執行される」旨の条項(Reform Clause)を設けることも有効です。

⚠ 米国カリフォルニア州など―従業員への不勧誘禁止も無効になる国・州がある

 

Non-Solicitation Agreement は Non-Compete より規制が緩やかとされてきましたが,近年,従業員保護・競争促進の観点から規制が強化されている国・州が増えています。特に以下の点に注意が必要です。

 

・米国カリフォルニア州では,従業員への不勧誘禁止条項も原則無効とする判例が蓄積されており,2024年以降さらに規制が強化されている
・EU加盟国では,労働者の移動の自由(TFEU第45条)の観点から過度な制限は認められない
・英国では契約終了後の不勧誘禁止条項について,合理性審査が厳格に行われる
・日本では代償措置(退職金の上乗せ等)がない場合,禁止期間・対象が広いと無効とされるリスクがある
・「Solicit(勧誘)」の定義が曖昧だと,自発的な接触まで制限されているとして過度とみなされる

Non-Solicitation Agreement で弁護士が必要な理由

有効性を確保した条項設計

不勧誘条項は「禁止対象者の範囲が広すぎる」「期間の定めがない」「Solicitの定義が曖昧」などの理由で無効とされます。実効性ある条項にするためには,準拠法を踏まえた精緻な設計が必要です。

各国の規制への対応

カリフォルニア州・EU・英国など,不勧誘条項の有効性は準拠法によって大きく異なります。グローバルに事業を展開する企業には,現地法を踏まえた個別設計が不可欠です。現地の弁護士との連携も対応します。

違反発覚時の迅速な法的対応

元従業員・取引先による引き抜き行為が判明した場合,差止命令・損害賠償請求等の法的措置を迅速に取る必要があります。実効性ある違反時の救済条項の設計と,違反発覚後の対応もサポートします。

相手方の広範な条項への交渉・修正

相手方から届いた契約書に広範な Non-Solicitation 条項が含まれている場合,自社の事業活動に支障が出ない範囲に修正・交渉する必要があります。修正案(Redline)の作成から交渉対応まで一貫してサポートします。

よくある質問(FAQ)

Q. Non-Solicitation と Non-Compete の違いは何ですか?

A. Non-Compete(競業禁止)は競合他社への転職・就業・起業そのものを一定期間・地域・業種の範囲で制限します。一方,Non-Solicitation(不勧誘)は競合他社への転職自体は制限せず,転職後も「元の雇用主の従業員・顧客に対して引き抜き行為をすること」を禁止します。Non-Compete より制限の範囲が狭い分,有効とされやすいとされますが,近年はカリフォルニア州など Non-Solicitation も規制する動きがあります。

Q. 退職した従業員が自社の顧客に営業をかけています。契約書がなくても止められますか?

A. 契約書(不勧誘条項)がなければ,元従業員が自社の顧客にアプローチすることを一般的に制限することはできません。ただし,顧客情報が営業秘密・秘密情報に当たる場合は,不正競争防止法や NDA 違反として対応できる場合があります。今後のトラブルを防ぐためにも,雇用契約書・退職合意書に Non-Solicitation 条項を明記することを強くお勧めします。

Q. 不勧誘禁止の期間はどのくらいが適切ですか?

A. 準拠法・役職・業種・禁止行為の内容によって異なりますが,日本・英国・米国(一部の州)では一般的に6ヶ月〜2年程度が合理的とされることが多いです。2年を超える禁止期間は無効とされるリスクが高まります。また,禁止期間の長さに加えて,代償措置(退職金の上乗せ・特別補償等)の有無も有効性の判断に影響します。具体的な設計は弁護士にご相談ください。

Q. 相手方から自発的に接触してきた場合(Passive Solicitation)も不勧誘違反になりますか?

A. 「Solicit(勧誘)」の定義次第です。一般的に「勧誘」とは能動的な働きかけを指すため,相手方から先にコンタクトしてきた場合(Passive Solicitation)は不勧誘違反にならないとされることが多いです。ただし,契約書の定義が「求人に応募することも含む」などと広く定められている場合は違反とみなされる可能性があります。契約書に「勧誘」の定義を明確に設けることで,このような紛争を防げます。

Q. 日本の従業員との雇用契約書に英文で Non-Solicitation 条項を入れることはできますか?

A. 可能です。ただし,日本で就労する従業員との雇用契約には日本の労働法(労働基準法等の強行法規)が適用される点に注意が必要です。Non-Solicitation 条項の有効性は,①禁止期間・対象の合理性,②代償措置の有無,③対象従業員の地位・アクセスできた機密情報の性質などを踏まえて判断されます。外国語のみで作成する場合,日本語訳との相違が問題になることも多いため,日英対照版の作成をお勧めします。

Q. Non-Solicitation Agreement の作成・リーガルチェックの費用と納期はどのくらいですか?

A. 契約書の内容・ページ数・作業内容(新規作成・チェック・翻訳)によって異なります。見積り依頼から当日または翌営業日中に回答します。正式ご依頼まで料金は発生しません。契約書をご添付の上お問い合わせいただければ,内容を確認した上で正確な見積もりをお伝えします。

【注意事項】本ページの内容は一般的な解説を目的としており,個別の案件に対する法的アドバイスではありません。Non-Solicitation Agreement の各条項の有効性・解釈は準拠法および相手国の法制度によって異なります。実際の契約書の作成・審査にあたっては,必要に応じて現地の弁護士にもご相談されることをお勧めします。

弁護士 菊地正登

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