Intentionally Omitted(英文契約書用語の弁護士による解説)
英文契約書を作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Intentionally Omittedがあります。
これは,英文契約書では,通常,「意図的に削除された」という意味で使用されます。
上記のとおり,意味は特殊というわけではないのですが,Intentionally Omittedがどのような場面で使用されるかを知っておくと,意外と便利なため,取り上げました。
実際に,英文契約書で使用される場合,例えば,Article 12. Intentionally Omitted.のように使われます。
和訳は「第12条(意図的に削除)」となります。
どういう場面で使用されるかというと,例えば,自社のひな型の契約書を標準契約書としているが,今回の取引先との間では,性質上適用されない条項が含まれていたとします。
その場合,本来であれば,Article 12全体を削除してしまえば済むはずです。
にもかかわらず,あえて上記のような方法を採用するのは,例えば,条項番号をずらしたことによって,他の条項を引用している条項内の条項番号を変更しなければならなくなり,変更し忘れが生じるリスクを避けるということが挙げられます。
また,多くの契約書を管理している場合,いくつかの契約書の条項番号が他のものと異なっていると,管理がしにくくなるということも挙げられます。
そのため,Article 12という表記は残したまま,条文の本文を削除し,「ミスではなく,あえて削除しています」ということを示すために,Intentionally Omittedと記載するわけです。
もう少し,具体的に説明すると以下のような利便性があります。
上記の例でArticle 12 Intentionally Omitted.とせずにArticle 12全体をまるごと削除したとします。
こうすると,例えば,Survival(生存)条項などで,Articles 9, 10, 12, 15 and 20が契約終了後も効果が持続するなどとされている場合に,12がなくなって,それ以降の番号が繰り下がるので,12を削除し,15を14にして20を19にしなければならなくなります。
その他の条項でも12条以降の条項を引用しているような条項があれば,それらをすべて変えないといけません。
これは煩雑ですし,検討過程で,複数削除したり,条項を後で挿入したりすることもあれば,作業がより複雑になり混乱が生じます。
これに対し,Article 12 Intentionally Omitted.として,Article 12という番号自体はそのままにしたとします。
そうすると,上記のSurvival(生存)条項の番号も特に変えなくてよい(12を無視して読めばよい)ですし,その後の削除や挿入も,Article 12はいじらないので,特に混乱することもなくなります。
以上のようなメリットがあるので,英文契約書の実務ではよく使われる手法です。