英文契約書の相談・質問集6 取引開始前に現地法の調査もしなければなりませんか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「海外展開を実行する前に,進出先の現地法の調査まで事前に行わなければならないですか。」というものがあります。
いわゆる直接進出(独資や合弁により現法を設立して進出する形態)の場合は,現地の会社法や外資規制法などの適用を受けますので,通常は,進出前の現地法調査は必須と思われます。
よく聞かれるのは,間接進出(現法を設立するのではなく,例えば,現地に販売店や代理店などのパートナー企業と取引をし,現地企業を介して間接的に自社製品の販売展開を行う形態)の場合です。
現地企業と販売店契約(Distribution Agreement)や代理店契約(Agency Agreement)などを締結して海外進出する場合,現地の販売店/代理店保護法に注意する必要があります。
販売店契約や代理店契約を締結して取引を継続していると,いずれこの契約を何らかの理由で終了させる必要を生じます。
その際に,現地の法律等で,販売店や代理店が保護されている場合があります。
販売店や代理店にとってみれば,自社のコストで,外国の商品を自国に広めるために販促・マーケティングなどの努力をし,ようやく商品の認知度を高め,ブランディングに成功し販売チャネルを確保したところで,契約を解消されたのでは困るわけです。
特に,販売店や代理店の売上げの占有率が当該メーカーに依存していたり,販売店等の規模が小さかったりすると,問題は深刻となります。
そのため,現地の法律や判例で,こうした販売店や代理店を一定の要件の下に保護している場合があるのです。例えば,契約解消のためには一定の猶予期間を設けなければならなかったり,補償金の支払いが必要だったりします。
したがって,リスクアセスメントとリスクマネジメントの観点からは,進出前に現地法を調査し,こうした販売店保護法等の内容を把握しておくのが望ましいことになります。
しかし,現実には,予算の問題,現地の法制度の充実性の問題,現地弁護士の信頼性の問題等,様々な観点から,現実には,特に中小企業の間接進出においては,事前にそこまでは実行せずに進出しているケースもあります。
このような場合でも,上記のような法令や,例えば,競合品の取り扱いを禁止したり,販売地域を限定したりする場合には,独占禁止法や競争法の類の法令による規制などについてリスクを最低限把握しておくことは必要となってきます。
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