Cooperate with...(英文契約書用語の弁護士による解説)
英文契約書を作成,チェック,翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Cooperate with...があります。
これは,特に,英文契約書に特有な用語というわけではないですが,英文契約書で使用される場合,通常,「…に協力する」という意味で使用されます。
英文契約書により当事者が何らかの取引関係に入るということは,その後,様々な問題に遭遇する可能性が高くなります。
そのため,英文契約書には,通常,何か問題が起きた場合には,どちらの当事者がどのように責任を負うのかを定めておくことになります。
もっとも,何か問題が起きたときに,いずれかの当事者が100%責任を負うとしても,最良の解決ができず,結局,他方の当事者にも何らかの不都合が起きるということもありえます。
例えば,売主が買主に対し販売した商品が,第三者の知的財産権を侵害するとして,当該第三者から知的財産権侵害のクレームがなされたとします。
この場合,英文契約書では,売主が,販売する商品が第三者の知的財産権を侵害することはないことを保証し,仮に第三者から知的財産権侵害のクレームがなされた場合には,売主が全責任を負うと定められることがあります。
しかしながら,実際には,売主(例えば北米企業)から商品を買い付けて現地(例えば日本)で転売している買主が,第三者から知的財産権侵害のクレームを受けるという場合が多いです。
そのため,いくら英文契約書上は,売主が全責任を負うと定めておいたとしても,第三者からすれば,外国企業の売り主に対し,直接クレームを入れたり,その後の交渉をするのはハードルが高い場合が多く,そう簡単に全責任を売主に転嫁できないことも現場ではよくあります。
こうなると,買主としても,事実上,第三者に対し何らかの対応をせざるを得なくなります。
そのため,売主,買主双方の立場にとって,お互いが役割分担をして,協力をしながらクレームを処理する方が適切な場合も多いといえます。
このような場面を想定して,Cooperate with...という文言が英文契約書で使われることがあります。
上記の例でいうと,仮に,買主が第三者から知的財産権侵害のクレームを受けた場合,直ちに売主に通知し,売主が当該クレームに対応するのに,合理的な協力をするという条項がこれにあたります。
もっとも,合理的に協力するという表現はあいまいですので,程度問題となり,あとでこの点が係争になることもあります。
他方で,何をすべきなのか,どの程度の協力をすることが義務なのか,どこまでが無償でどこからが有償なのか,そのあたりを事前に事細かに決められないことも多いです。
このようなややあいまいさを残さざるをえない規定を作るときは,抽象的ですが,ある程度具体的で,ある程度裁量を残しあまりがんじがらめにしない文言で約定するのが良いことが多いです。