In the ordinary course of business(英文契約書用語の弁護士による解説)
英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際によく登場する英文契約書用語に,In the ordinary course of businessがあります。
これは,英文契約書で使用される場合,通常,「通常業務における」というような意味で使われます。
実際には,in the ordinary course of business of the Seller(売主の通常業務において)などとして,誰の通常業務なのかが書かれていることが多いです。
これは,上記の例に関していうと,売主が何らかの業務を例えば買主に提供する(商品についてのアフターサービスなど)という義務が英文契約書に書かれていた場合,具体的にどういう内容・方法・程度の業務が提供されるのかというのが問題になることがあります。
この場合に,例えば,買主の求める方法で売主がアフターサービスを提供しなければならないとなれば,売主は予想外の負担を強いられる危険があります。
そのため,売主側としては,自分たちの基準,自分たちが通常業務として普段行っている内容・方法・程度でアフターサービスを提供するとしたいと考えたとします。
このような場合に,The Seller provide such services to the Buyer in the ordinary course of business of the Seller.(売主は買主に対し売主が通常業務として行っているサービスを提供する。)などとして,売主が通常行っているアフターサービスを買主に提供するという表現を使うことがあります。
これにより,売主としては,自社の標準的なアフターサービスの内容を立証できるようにしておけば,あとで,買主からここまでやって欲しい,これに対応しないのは契約違反だなどと言われても反論ができるということになります。
もちろん,トラブルにならないように,現実には,事前にアフターサービスの内容などについて資料を提供するなどして明らかにしておく,サービス内容に改訂があれば,その都度知らせるということが大切なのはいうまでもありません。
サービスは目に見えないものなので,サービスの提供者と受領者で認識がずれていることがよくあります。
もちろん,サービスが受領者の考えている基準を超えていれば何の問題もないのですが,逆に受領者が期待しているサービス内容が実際に提供されたものを上回っているとトラブルになります。
特に,海外取引では,日本企業が期待しているレベルが高すぎて,海外企業のサービス提供レベルがそれに追いつかずに,日本企業がクレームを出さざるを得ないということがしょっちゅうあります。
サービスレベルについては,国の常識,業界の標準というものが存在しますので,必ず事前にレベルの認識のすり合わせを行うようにしましょう。
そして,可能な限り,サービスレベルについても可視化して契約書に落とし込んでおくとトラブルを回避できる可能性が高まります。