Prior to...(英文契約書用語の弁護士による解説)
英文契約書を作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Prior to...があります。
これは,英文契約書で使用される場合,「…より前に」という意味で通常使用されます。
The Seller shall...prior to the Closing Date(売主は,クロージング日以前に...)などという表現で使われることがあります。
このprior to…はbefore...と同じ意味です。そのため,...の日や時は含まれないということになります。Before the Closing Dateと表現しても同じ意味になります。
...より前ということで,...自体は含んでいません。例えば,上記の例で,クロージング日も含んでいるとしたいのであれば,on or before the Closing Dateと表記するのが一般的です。
このprior to...という英文契約書用語は,頻繁に登場しますが,beforeと同じ意味ですので,平易なbeforeを使うべきだとも言われています。
日本語の契約書をレビューしている際も,それほど細かくチェックしていないかもしれませんが,「前」とか「後」とかを表す用語の場合,その当日を含むか含まないかはときに重要な意味をもつ場合があります。
普段,生活しているときに,~以前といった場合,~を含むのか,~以上といった場合,~を含むのかなどをそれほど意識していなくとも,特に大きな問題にはならないことも多いでしょうが,契約となるとそうもいきません。
More thanの場合は,no later thanの場合はどうなのかなど,この手の表現については,なるべく正確に表現し,含むのか含まないのかあいまいにならないようにするのが無難です。
ちなみに,上記のmore thanというのはthanの後は含みません。そのため,3つ以上と言いたいのであれば,more than two (2)や,three (3) or moreなどとしなければいけません。
no later than...は,...を含みます。そのため,no later than 30th April必着であれば,30日当日に到着した場合も含まれます。
そのそも,このような解釈が必要になるような余裕のない状態で契約書上の権利を行使したり,義務を履行したりということがないようにしたいですが,契約書を作成する段階であいまいさを残さないことがまず入り口で大切になります。
したがって,このprior to...を使用する際も,...の部分は含まれないという前提で英文契約書を作成,審査,レビュー,英訳/和訳していく必要があります。