英文契約書の相談・質問集93 契約書もないのに正規販売代理店だと主張されているのですが。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「契約書もないのに正規販売代理店だと主張されているのですが。」というものがあります。

 

 販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)は,例えば,売主が自社製品を海外で販売展開したいと考えた際に,現地の企業を販売店(Distributor)として指名し,販売店に商品を現地で販売展開してもらうという契約です。

 

 通常は,販売店契約書(Distribution/Distributorship Agreement)という契約書を事前に締結し,その契約書の内容に従って,商品を販売展開していきます。

 

 では,契約書がないと販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)や何らかの継続的な売買契約は成立しないのでしょうか。

 

 多くの国では,特殊な契約を除いては,契約書などの書面がなくとも,口頭や行動で契約が成立することを認めています。

 

 そのため,例えば,特に買主との間で正式な契約書を交わしていなくとも,長期間に渡り,商品をずっと卸しているという事実があれば,その事実をもって,長期的・継続的な売買契約が成立していると認められることはありえます。

 

 また,あるタイミングで,買主から,正規の販売代理店という証明があった方が営業がしやすいという理由から,販売代理店の証明書を発行してほしいと言われて,発行したというような場合も,これをもって販売店契約のような継続的な売買契約が成立したと認められる可能性があります。

 

 それでは,このような継続的な契約が成立したとされた場合,単に商品を売っているという場合と比べて何が異なるのでしょうか。

 

 最も大きな違いは,国の法律や判例によっては,継続的な契約が認定されると,買主である販売店が一定の保護を受けられる可能性が出てくる点です。

 

 保護の具体例としては,売主が取引をやめたいと考えた際に自由にやめることはできず,取引をやめるには相当期間の猶予が与えられなければならない(例えば,売主が取引をやめたいと通知してから半年間や1年間は継続しなければならないなど)とか,補償金を支払わなければならないなどがありえます。

 

 他方で,売主側に何かメリットが生じるかというと,売主側には基本的にメリットがありません。

 

 というのは,きちんとした契約書を交わしていない中で,単に事実の積み重ねで販売店契約や継続的売買契約のような長期的な契約が認められてしまっているので,買主側は,特に注文をしなければいけない義務や,どのくらい商品を買わなければならないかという最低購入数量の義務も基本的に負っていないということになるからです。

 

 そうすると,このような状態は,買主としては,契約終了などについて一定の保護を受けられる地位にあるにもかかわらず,売主は買主に対して,このくらい商品を買って販売してくれだとか,こういうルールを守って商品を広告宣伝してくれなどと要求することは基本的にできない(法的根拠がない)ということになってしまい,売主には不利になってしまう可能性があります。

 

 したがって,取引先は信用できるからといって,契約書がない状態で商品を卸しているという関係を継続していると,知らないうちに買主を有利な立場にし,売主はそれに見合う利益を何ら得られないということになりかねません。

 

 このようなことにならないように,契約書をきちんと準備し,買主が受けるメリットに見合うように,売主としても買主に行って欲しいことを交渉して契約書に記載した方が良いということになります。

 

 最初からきちんとした契約書を用意することができなかったとしても,取引量が増えてきたり,相当期間取引が続いたり,買主が正規販売店の証明書を要求してきたりしたタイミングで,正式な販売店契約書(Distribution/Distributorship Agreement)を締結することをおすすめします。

 

 契約書の交渉をすることにより,売主に有利になる条件もきちんと交渉でき,これらを契約書に挿入することで,目に見える形でお互いの利益・不利益が確定することになります。

 

 このように,契約書がなくとも契約が成立し,一定の法的保護が与えられてしまうことがありますので注意が必要です。

 

 このことは,口頭や行動でも契約が成立するのだから契約書は不要だということにならないということを示す良い事例といえます。

 

 契約書がない=何も約束しているわけではないから何でも自由だと考えていると,思わぬトラブルになる可能性があるということです。

 

 法律や判例が存在するため,知らず知らずのうちに自社に不利な取扱いになっているということがありうるのです。

 

 以上述べたように,契約書は,単なるお題目で作成すべきということではなく,契約書がないがゆえに不自由になってしまうという事態を避けるために重要なものでもあるのです。

 

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