Indirectly(英文契約書用語の弁護士による解説)
英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Indirectlyがあります。
これは,英文契約書で使用される場合,通常,「間接的に」という意味で使用されます。
重要なのは,和訳ではなく,具体的な意味と使用法です。
このindirectlyは,対義語のdirectlyと一緒に使われることが多いです。独占販売店契約書(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)でよくみかけます。
独占販売店契約書(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)の場合,通常は,売主が,販売地域(Territory)の顧客に対し商品を売ってはならないという条項が入れられます。
この場合に,グレーゾーンのように問題になるのは,例えば,売主が自ら販売地域の顧客に対して製品を販売するのは,独占販売店契約書(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)に明確に違反するとしても,では,売主が自社の関連会社(Affiliate)に対して,いったん商品を横流しして,その関連会社から販売地域内の顧客に商品を売ったらどうなるのかという点です。
売主は,自ら直接販売地域の顧客に商品を売っているわけではなく,一度別会社を経由して,迂回して商品を販売地域の顧客に売っていることになります。
このような行為も,販売店としては禁止したいと考えるでしょう。その場合に,このindirectlyという表現が使われれることがあります。
例えば,Seller shall not, directly or indirectly, sell the Prodcuts to any customer in the Territory during the term of this Agreement.(売主は,本契約期間中,販売地域内の顧客に対し,直接的にまたは間接的に,本製品を販売してはならない。)というように記載されます。
Indirectlyがどういう行為まで禁止することになるのか,上記の表現では必ずしも明確になっていないのですが,少なくとも前述した露骨な迂回行為は禁止されていると解釈できると思います。
同じように,間接的な販売行為を禁止する表現としては,through a third partyが挙げられます。
こちらも,throughというのが明確な用語ではないため,どこまでの行為が,「第三者を通じて」といえるのか,必ずしもはっきりしませんが,前述のような行為は禁止できると考えて良いでしょう。
何かの行為を禁止する場合,想定される行為をすべて挙げて禁止するというのは,事実上難しいことが多いでしょう。
そのため,やや曖昧ではあっても,英文契約書を作成する際には,ある程度広く解釈できるような表現を選択するということはよくあります。