Retroactively(英文契約書用語の弁護士による解説)
英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際に登場する英文契約書用語に,Retroacgivelyがあります。
これは,英文契約書で使用される場合,通常,「遡って」という意味で使用されます。
あまり使用頻度は高くない用語ではありますが,契約書をバックデートするときなどに使用することがあります。
契約書の効力発生日は,as of [Date]などと記載して,Dateの日から効力を発生すると記載することが多いです。
この日付と,実際にサインした日が一致していなくとも通常は問題にならないとは思います。
ただ,サインした日よりも効力発生日が過去になっている場合,特に,その期間が長期になっているような場合は,存在しなかった契約書を後から存在したかのように見せるということになるので,慎重に考えたほうが良い場合もあります。
そうしたときに,存在しなかった契約書があたかも,以前から存在していたということを「偽装」するものではなく,当事者が過去に遡って当該契約書に記載した内容で合意したいと後から考え,契約締結をしたことをわかるようにしておくことがあります。
その際に,...retroactively effective as of...などとして,retroactivelyという用語をあえて挿入することで,この契約書は実際に存在する日よりも遡って効力をもたせているということをはっきりとさせておくということをすることがあります。
あまり問題になる話ではなく,使用頻度は高くはないと思いますが,何らかの事情で契約書を後付で作成しなければならないという場合,このような文言を挿入して,実際の経緯と異なることはないということを明記して置く必要があることもあるかもしれません。
当然ですが,契約書は,将来のビジネスについての条件を予め定めておくことに意義がありますので,過去に遡らせて作成するというのは通常のプラクティスではありません。
きちんと,これから開始されるビジネス・取引について問題を生じることがないように,予め交渉し,合意内容を漏らすことなく契約書に記載して,契約書を締結した上で,取引を開始するのが基本ということになります。