Not more than, not less than(英文契約書用語の弁護士による解説)
英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語に,Not more than, not less thanがあります。
これは,英文契約書では,数字を伴って登場することがほとんどです。
直訳で和訳すると,not more than five (5)で,「5を超えることはない」という意味になります。
これでは,ややこしく感じると思いますので,端的に表現すれば,5を超えないわけなので,「5以下」という意味になります。
同じ意味を英文の肯定表現で言い表すと,five (5) or lessといういうことになります。
Less というのは,「その数字より下」を表しますので,five (5) or lessとすると,「5またはそれより下」という意味になります。
そのため,実質的に「5以下」という意味になります。
Not more thanの反対のnot less thanは,not less than five (5)とすると,「5より下ということはない」という意味ですので,つまり,和訳としては「5以上」という意味になります。
これも,逆にして肯定表現ができます。Five or moreとすると,「5以上」という和訳になります。
Moreは,例えば,more than five (5)とすると,5は含まれませんので,「5超」という和訳になります。
そのため,「5以上」を表現したいときは,more than five (5)ではなく,5を含めるために,5 or moreとすることになります。
日本語でも「以上」,「超」,「以下」,「未満」の表現でたまに混乱している文章などを見ることがありますが,英語でも上記の表現を間違えると,場合によって非常に大きな影響を生じることがありますので,注意が必要です。
英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際,数字を伴う表現が登場した場合には,注意する必要があります。
数字は金額や数量などを表します。そして,契約書では,金額や数量は,契約の目的に直結する契約の「要素」であることが多く重要です。
例えば,more than five (5)となっていた場合に,5を含むかどうかというのは,大した問題ではないように感じることもあるかもしれません。
しかしながら,例えば,製造ラインに組み込む高性能ロボットを最低何台購入する義務があるのかというのがテーマだとしたらどうでしょうか。
1台1億円するロボットで,製造ラインに導入する台数5台しか不要であるとしたらどうでしょうか。
もし,more than five (5)購入しなさいとなっていたところ,買主が5台しか発注しなければ,売主は,6台以上購入するようにクレームを入れてくるかもしれません。
または,6台以上購入しないのであれば,契約書の内容と違うので,1台も売らないと言われてしまうかもしれません。
この場合,more than five (5)という表現がされているので,買主の理解は誤りであり,売主の理解が正しいことになります。
このように,数字の問題は,単位や金額などによっては,たとえ1つの違いでも大きな違いになる(上記の例では1億円の違い)可能性があります。
そのため,数字が絡んだ表現を使うときは,正確に使うようにするとともに,自社の理解が正しいかどうかを念のため相手方に確認してから契約書にサインしたほうが良いでしょう。
数字は上記の例のように数量や金額に関連することもありますし,日数に関連することもあります。
これらいずれも契約書において極めて重要な要素になることは容易に想像できると思います。
したがって,英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際には,数字(数量,金額,日付など)を伴った表現には十分注意する必要があります。