Subsequently(英文契約書用語の弁護士による解説)
英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Subsequentlyがあります。
これは,英文契約書で使用される場合,通常,「その後」という意味で使用されます。
Subsequentlyが,英文契約書で使用される場合は,最初にこう,その後はこうというように,時系列が後になることにより取り扱いが変化するようなときに,よく登場します。
最も典型的と思われるのが,契約の有効期間(Effective Term)を定める条項において使用される場合です。
販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)などの継続的な契約では,必ずといって良いほど契約期間が定められます。
どの国の法律がその契約に適用されるかという問題である準拠法によっても異なりますが,契約期間が定められていないと,当事者のいずれかが契約を終了させる旨の通知をすると,契約が終了するという危険もあります。
そのため,継続的な契約を締結する場合は,必ず契約期間を定めるということになります。
この場合,「最初に〇〇年,その後,当事者の一方が相手方に対して,契約を更新しない旨の通知をしない限り,〇〇年ずつ自動的に更新する。」などと英文契約書に定められることがあります。
この「その後」を表す英文契約書用語として,subsequentlyが登場することになります。
この契約期間および更新についての条項を,作成,チェック(レビュー/審査),修正する際に注意しなければならない点は,その後の更新が何回予定されているかという点です。
最初の契約期間(Initial Term)が終了し,その後,自動的に更新するという条項があった場合,subsequentlyという用語は,「その後」ということを表すだけですので,この用語を見ても,更新が何回予定されているのかはわかりません。
例えば,契約期間と更新を定めた条文が,two (2) year termと,termが単数形になっているか,それとも,two (2) year termsと,termが複数形になっているかで判断できることもあります。
Two (2) year termsと複数形になっていれば,複数回更新が予定されていることがわかります。
そして,回数が特に書いていないのであれば,通常は,相手方から更新拒絶の通知が来ない限りは,無制限に更新を繰り返すものと理解して良いでしょう。
これに対して,two (2) year termと単数形なっていれば,それだけで明確というわけではないですが,単数になっているのであれば,一回限りの更新を予定しているという解釈が成り立ちます。
ただ,これだけで区別するのは,困難なこともあります。
複数回の更新を期待している当事者が,termと単数形になっていることに気づかなかった,または,契約書を作成,チェック(レビュー/審査),修正する際にタイプミスしてしまい,sを付け忘れただけで,契約の更新は一回に限らないはずだなどと主張する可能性もあります。
この主張が通るかどうかはさておき,こうした主張・クレームを受けること自体が,損失になります。
また,一般条項(ボイラープレート条項)として,英文契約書に登場する単語で複数形と単数形がありうる場合,文脈によって単数形は複数形として読むという趣旨の規定があることがあります。
このような条項があると,要するに,単数形で表示されていても,複数形として理解することがあるということになります。
そのため,先の例では,termと単数形になっていても,それは複数形で読むべきだという主張が成り立ちえます。
こうなると,termが単数形なのか複数形なのかという点だけで,更新が複数回予定されているのかどうかが明確に判断できないということになってしまいます。
こうしたことを防止するために,複数回予定されているのであれば,successively(継続的に)という単語を挿入したり,具体的に何回更新が予定されているのか,回数を英文契約書に記載するという工夫が必要になってきます。
契約期間は,そのビジネスのいわば寿命ですので,大変大切な条項です。
このような重要な条項があいまいであったり,複数の解釈を許したりするようですと,無用の紛争を生じることになりますので,英文契約書を作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正する際には,精査しなければなりません。