Collectively(英文契約書用語の弁護士による解説)
英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Collectivelyがあります。
これは,英文契約書で使用される場合,通常,「総称して」という意味で使用されます。
英文契約書では,定義条項(Definition Clause)が設けられることが多いです。
このcollectivelyは,英文契約書の定義の条項でよく登場します。
なぜ,契約書において用語を定義するかというと,複数回登場する概念を常に同じ意味で使用したい,登場するたびに用語の意味を説明をしていると文章が長くなって理解が難しくなるので,表現を簡易にしたいなどという要請があるからです。
契約書において,定義は重要です。英文契約書では,定義された用語は,最初の頭文字を大文字にしたり,用語全体を大文字にしたりします。
一度定義をしたら,同じ意味を表す場合は,同じ用語を統一的に使用します。
これにより何度も説明する必要がなくなりますし,定義された条項を使用していれば,その定義どおりの意味になりますので,意味を誤解したりする危険も少なくなります。
定義する場合は,"XX" means...という方法もありますし,条文を普通に書いていて,途中で,日本語でいうところの(以下「XX」という。)というように,(hereinafter referred to as "XX")などと定義づけることもあります。
後者の方法で英文契約書で用語を定義するときに,collectivelyがよく使われます。
これは,併せて総称する場合には,"XX"と表記しますという文脈で登場します。
例えば,売主はSellerと呼び,買主はBuyerと呼び,各当事者はPartyと呼び,両者を「総称して」Partiesと呼びますというような表現をする際に,collectivelyを使用します。
対義語は,individuallyとなります。Individuallyに呼ぶ場合は,Partyと単数になり,collectivelyに表記する時は,Partiesとなりますと使うわけです。
なお,一度定義した用語は,必ず同じ表記で統一的に使用することが大切です。
定義した用語が,大文字で登場したり,小文字で登場したりすると,小文字にしたときは意味が異なるのかという疑問を生じるおそれがあるからです。
もちろん,例えば,Partyというのが契約当事者のことを定義したもので,契約書において第三者を,third partyと表記するのは問題ないです。
なぜなら,契約の当事者ではない第三者を表記しているので,定義が当たらないからです。
これを,third Partyとするのは,定義された用語は,契約当事者ですから,おかしいということになります。
問題なのは,定義された用語と同じ意味を表したいのに,定義された表記と異なる表記をしてしまう場合です。
ただ,定義された用語を大文字で統一的に使用していない契約書というのは結構な確立で見ます。
ドラフトしてい過程でつい忘れてしまうということなのでしょう。自分は意味がわかって書いているので,気づかないでそのまま大文字と小文字が混ざってしまうということなのだと思います。
通常は,これで大きな誤解につながって,大きな問題を生じるということはないとは思いますが,できれば統一的に使用したほうが良いでしょう。
なお,大文字を小文字にうっかりしてしまったという場合は,文脈から正しく理解してもらえることが多いとは思いますが,つい定義した用語と異なる用語を使ってしまったとなると,問題を生じる可能性が高くなってしまいます。
例えば,"Client" means...として,Clientという用語を定義していたのに,つい契約書を書いていく過程で,頭の中で,customerと表記してしまったというような場合です。
こうなると,customerは別の単語ですので,Clientとは別の意味で使用している,別の用語だと主張され,何らかのトラブルに発展する可能性が高くなります。
このようなことがないように,一度定義された用語は,統一的に使用することを心がけると良いでしょう。
ワードの検索機能などを使って,別の単語で書いてしまっていないか,大文字で統一されているかなどをチェックするのも良いでしょう。