At any time(英文契約書用語の弁護士による解説)
英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語に,At any timeがあります。
これは,英文契約書で使用される場合,通常,「いつでも」という意味で使用されます。
よく見かけるのは,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)のような,ある程度の期間継続する契約の中途解約条項の中です。
中途解約とは,契約期間中に,相手方に契約期間の途中で契約を解約することを通知して,途中で契約を終了させることを指します。
英語では,termination without causeと呼んだりします。
Terminationは契約の終了・解除という意味で,without causeは理由・原因なくという意味です。
つまり,特に理由がなくとも,契約を終了させられる=中途解約条項ということになります。
この中途解約は,中途解約することを相手方に通知して,即時に契約を終了させられるとなると,相手方に不利益が大きいです。
例えば,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)において,サプライヤーが突然中途解約を通知し,直ちに契約が終了するとなると,販売店は抱えている在庫の問題がありますし,プロモーションなどをどうすればよいのか,窮地に立たされます。
そのため,通常は,終了までに一定期間の猶予をもって通知し,突然の解約は認めないと定めます。
このように,中途解約の効果が,中途解約の通知と同時に即時に生じるとすると,相手方当事者には不意打ち的になり,不利益が大きいので,普通は即時の解約は認められていません。
ただ,中途解約の通知自体は,契約期間中のいつでも出せるということが普通です。
この,中途解約の通知を「いつでも」出せるというときに,at any timeがよく使用されます。
例えば,Supplier may terminate this Ageement withou cause at any time by giving written notice at least...(サプライヤーは,少なくとも…書面により通知することによって,理由がなくても,いつでも本契約を解約することができる)などとして使用されます。
いつでも契約を解約できる中途解約条項は,かなり影響力があります。
販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)のような継続的な契約では,ある程度の契約期間が設けられることが通常です。
販売店からすれば,ある程度の期間ビジネスをさせてもらえないと,利益が出ず,販促コストなどの投下資本の回収ができないためです。
そのため,最初は1年から5年くらいの契約期間が設けられ,その後は問題なければ更新していくと定められることが多いです。
こうしたまとまった契約期間が定められているにもかかわらず,契約期間中にいつでも,理由なく契約を途中で解約できるという内容ですから,特に販売店には不利益が大きい場合があるわけです。
そのため,継続的な契約の契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に,この中途解約条項が挿入されている場合は,主にこれによって不利益を受ける当事者は,中途解約条項を受け入れるかどうかも含めて,慎重に検討する必要があります。
理由なく解約できる中途解約条項ではなく,相手方に契約違反などの落ち度がある場合に契約を解除できるという条項は,termination with causeと呼ばれます。
継続的契約では,理由のない中途解約条項ではなく,このtermination with causeのみで対応するようにするというのも一案です。
ある程度の期間契約が継続しないと意味がないという場合は,せっかく英文契約書に設けた契約期間が意味がないということにならないように,中途解約条項の採用については慎重に検討したほうが良いことがあります。
このように,at any timeという英文契約書用語は,重大な利害関係を持っている可能性があるので,この用語を含んで条項には,注意をする必要があるといえます。