Deduction(英文契約書用語の弁護士による解説)
英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Deductionがあります。
これは,英文契約書で使用される場合,通常,「控除」という意味で使用されます。
動詞は,deductで,「控除する」という意味になります。
英文契約書で金額について記載するときに使用されることが多い単語です。
例えば,ある金額から一定の金額を控除して差し引くというときにこのdeductionが使用されます。
英文契約書では,特に,請求する金額から一定の金額を源泉税(witholding tax)として控除するということを巡って問題になることがあります。
日本にもありますが,多くの国で,税金の源泉徴収という制度を採用しています。
これは,ある請求書について,金銭を支払う側が,本来の支払額から源泉徴収税額分を控除して,残額を請求者に支払い,源泉徴収税額は金銭を支払う側が納税するというものです。
そのため,源泉徴収が適用される支払いであると,請求書(invoice)に記載された金額よりも,実際の支払額は,税金を控除する分減るということになります。
これは,税法上強制なので,契約書に源泉税のことが記載されていなくとも税法にしたがって,支払者は,源泉徴収税額を請求額から控除して,控除分を納税しなければなりません。
ただ,まれに,この源泉徴収についてクレームを入れ,請求額の満額を支払うように相手方が要求してくるというケースがあります。
あくまで税金の問題ですので,英文契約書に記載がなくとも控除して支払うのが正しいということになるのですが,世の中には色々な人がいますので,すんなり理解して引き下がる人ばかりではありません。
「約束した金額を手元によこさないのはおかしい,契約違反だ」と頑なに視聴してくるケースも中にはあります。
そうなると,源泉徴収額どうこうというよりも,こうしたやり取りをしている時間のほうが損失になってしまいます。
そのため,このような場合に備えて,予め契約書に,源泉徴収税額は控除して支払われる旨を記載したり,逆に,源泉徴収税額を控除してはならず(もちろん税金は納めなければなりませんが),請求書の満額を支払う必要があると記載したりすることがあります。
このような「控除」を表す用語として,deductやdeductionがよく契約書に登場します。
予め記載しておくことで誤解を防ぐことができ,あとで揉めることを回避することができるようになります。
また,源泉徴収税額以外にも,振込手数料をどちらの当事者が負担するかによって,振込手数料を控除してよいかという問題でも,このdeductやdeductionが契約書に登場します。
特に海外送金では,例えば,日本から海外に送金する際,日本銀行が送金に関する手数料を徴収し,海外の銀行が着金に関する手数料を徴収し,2重に手数料がかかることがあります。
これらを控除してよいのか,どちらが負担するのかなどについては細かいようですが,事前に契約書で取り決めておくことがトラブル防止の観点からは大切です。
特に,海外取引になると,通常は,そのような主張をしてくる者はいないであろうと思える内容でも,びっくりするクレームを入れてくる人が現れます。
そのため,一度クレームを受けたことがあるなどの場合は,細かいように思えても,次回からはそのことを手当したひな形に契約書を修正していくという姿勢も大切かもしれません。