In due course(英文契約書用語の弁護士による解説)
英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,In due courseがあります。
これは,英文契約書で使用される場合,通常,「そのうち/やがて」という意味で使用されます。
In due courseは,英文契約書で頻出するということではないと思いますが,メールなどによる通信(correspondence: コレスポンデンス/コレポン)では,頻出する用語です。
「検討した後に,またメールを送ります」などと表現したい場合に,このin due courseという用語を用いて「そのうちメールします」というニュアンスを伝えることがよくあります。
もっとも,英文契約書でこの用語を使うのはあまりおすすめできません。
なぜなら,いつまでにという期限を明確にしていませんし,in due couseという用語自体がどのくらいのスパンのことを表しているのかが曖昧だからです。
同じことは,時間的な幅を表した他の表現,例えば,as soon as possible, without delay, within reasonable time, promptly, forthwithなどの用語についても当てはまります。
これらの表現は,結局は程度問題ということになってしまい,どの程度が期待される期間内なのかが曖昧でわからないということになってしまいます。
英文契約書の理想は,誰が読んでも一義的に同じ意味に読まれることなので,このように読む人によって解釈が異なるということはなるべく避けるべきなのです。
とはいえ,immediately,forthwith, promptlyあたりの用語は,実際には英文契約書でよく見られます。
特に,immediatelyについては,「直ちに」 ということですので,割と解釈の幅が狭いということで,よく使われています。
現実に実務で頻繁に使われている以上,これらの表現を使用することが問題だということではないのですが,当事者間で許容される時間の感覚に相当なずれがあると,クレームに繋がるので,その点は注意が必要です。
最終的には,裁判所や仲裁人が,紛争になれば,しかるべき期間がいつなのかを決定することになるわけですが,裁判する可能性があるほどに重要な期限的な内容を定めるのであれば,やはり最初から〇〇日以内などとして,具体的な期間を明記しておいたほうが無難でしょう。
性質上明確な期間を設定することが難しい場合に上記のような表現をやむを得ず使うというような意識のほうが適切かもしれません。
条項内容の重要さなども考慮して,一義的で明確な解釈という理想と,バッファーを持たせたい,曖昧にせざるを得ないなどの現実とのバランスをうまく調整することが契約書をドラフトする者に要求されているといえるでしょう。
最終的に自社の主張が受け入れられたとしても,クレームを受けて,協議・交渉しなければならないこと自体が損失であるということは覚えておくと良いと思います。
最後はわかってくれるだろうから良いということではなく,最初から明確にわかってくれていて,この点でのクレームはありえないという内容にすることが賢明といえます。
もちろん,特に厳密な期間を設けなくとも,いずれ行ってくれれば構わないという内容のこともあると思います。
そのような内容の場合には,このin due courseなどの表現を用いても問題ないでしょう。
時間的な表現は重要な場合がありますので,英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際に登場した場合は,注意しなければなりません。