Suspend(英文契約書用語の弁護士による解説)
英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Suspendがあります。
これは,英文契約書で使用される場合,通常,「中止する/停止する」という意味で使用されます。
例えば,ソフトウェアの使用許諾契約や,何らかのウェブ上のサービスを利用する条件が記載された利用規約などで,ユーザーが契約書や利用規約に違反した場合に,一時的にサービスの利用を停止することができるなどというときに,このSuspendがよく登場します。
他にも,独占的販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)において,最低購入数量(Minimum Purchase Quantity/Amount)が定められている場合に,その最低購入数量(Minimum Purchase Quantity/Amount)を販売店(Distributor)が達成できなかったときの制裁として,独占販売権(Exclusive sales right)を一時的に停止するという内容で使われることもあります。
当然ですが,このSuspendによりサービスが利用できなくなったり,独占販売権が停止されたりすると,利用者や販売店(Distributor)にとってダメージが大きいです。
そのため,どのような場合にサービスや権利がSuspendされてしまうのかは,事前に契約書をよく読んで,明確に理解しておくことがまずは大切です。
特に,Suspendを含む表現が,サービス提供者やサプライヤーなどの主観的な一方的判断を許す内容になっていないかは,契約書を英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく確認する必要があります。
もし,サービス提供者やサプライヤーが主観的にサービスの利用や権利をSuspendできるという契約内容になっていた場合,サービス利用者や販売店(Distributor)にとっては不利益が大きいです。
例えば,契約書に「サービス提供者やサプライヤーが停止すべきと判断した場合には」とだけ書かれていると,どのような場合に停止すべきと判断されるのか,客観的な基準がないため,利用者などが不安定な地位に立たされてしまうので注意しましょう。
なお,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の場合に,最低購入数量(Minimum Purchase Quantity/Amount)未達の場合に独占販売権をSuspendすることがあるとされている場合は,通常,サプライヤーの主観的な判断がなされる余地はないでしょう。
最低購入数量(Minimum Purchase Quantity/Amount)を達成したかしないかは,数字で客観的に確認できるからです。
ところが,例えば,サービスの利用規約などには,「その他,サービス提供者が不適切と判断した場合」などと,かなり主観的な判断を許す内容が書かれていることがあります。
この場合,「合理的に不適切と判断した場合」と修正するため,せめてreasonabllyなどの単語を入れるなど,利用規約の修正をしたいところです。
これにより,具体的な判断基準までは書かれていないものの,一応判断の合理性が求められることになるため,サービス提供者も安易にサービス利用を停止できなくなりますし,利用者もサービスの停止の有効性を争いやすくなります。
ですが,通常,利用規約はすべての利用者に共通して適用されるように作成されているため,個別に交渉して修正するのは難しいのが現実です。
せめて,B to Bでのソフトウェアの使用許諾契約などでは,このような一方的な判断によるサービス利用停止条項がないかどうかは,チェックし,もしあれば,できる限り主観的な判断を排除できるように,英文契約書の修正を試みるべきでしょう。
このように,Suspendという英文契約書用語は,Suspendを受ける側にとっては,受ける不利益が大きいため,その要件をきちんと確認し,できる限り修正をかけていくという姿勢が大切になります。