At will(英文契約書用語の弁護士による解説)
英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,At willがあります。
これは,英文契約書で使用される場合,通常,「自由に」という意味で使用されます。
アメリカの雇用契約で,いわゆる「随意雇用」と呼ばれるものがあります。
これは,英語ではemployment at willといい,いつでも雇用を終了させられる雇用契約を指しています。
このemployment at willでat willを目にした方もいらっしゃるかもしれません。
英文契約書では,頻出する用語とまではいえませんが,たまに見かけます。
当事者間である取引をすることになり,契約書を締結することになったときは,多くの場合に契約期間(Contract Term)を定めると思います。
このような契約期間を定めた場合,原則として,契約書に定められた契約の有効期間中に契約が終了することはないということになります。
ところが,契約書がなかったり,契約書に契約の有効期間を定めていなかったりすると,いつまで契約が続くのかがわからないということになってしまいます。
国の法律にもよりますが,このような場合は,どちらかが契約を終了させたいと通知すれば,at willの契約ということで,いつでも任意のタイミングで契約を終了させられると解釈されることがあります。
契約をずっと継続させたいがために,契約期間をあえて契約書に記載しなかったところ,at willの契約と解釈され,相手方からの契約終了通知により契約が簡単に終了してしまったということがないように気をつけましょう。
逆に,契約期間を設けずに,どちらかが契約を任意のタイミングで終了させられるようにしたいと考えれば,英文契約書の解除条項(Terminaiton Clause)にat willに終了させられると記載すれば良いということになります。
これにより,いつでも特に理由がなくとも契約を終了させられる(Termination without Cause)ことが可能になります。
また,上記のように契約期間が書かれていないケースだけではなく,契約期間が書かれていてその契約期間中であっても,at willに契約を終了させられると書けば,基本的にいつでも契約を終了させられるということになります。
このような契約期間中でも契約を終了させられるという条項のことを「中途解約条項」といいます。
この中途解約条項は,英文契約書でよく見られる条項です。
英語では,termination without causeなどと呼ばれます。特に理由・事由(Cause)がなくても契約を終了させられるという内容のため,このように呼ばれます。
逆に,理由・事由がある場合の契約解除権(例えば相手方の債務不履行を理由とする解除)については,termination with causeと呼びます。
当事者の契約違反など一定の事由があった場合に,それを理由として契約を途中で解除できるという場合がこれに該当します。
契約の有効期間がどうなっているのか,契約の終了条件がどうなっているのかについては,契約当事者の重大な関心事です。
このat willが英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際に登場した場合,契約の終了に関する条項である可能性が高いため,非常に大切な用語です。
契約期間や終了原因は,ビジネスの根幹に関わる問題ですので,受け入れられるないようなのかどうか,しっかりとレビュー・審査しなければなりません。