英文契約書の相談・質問集166 利用者が異常な使い方をした場合でも製造物責任は生じますか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「利用者が異常な使い方をした場合でも製造物責任は生じますか。」というものがあります。
以下,日本の製造物責任法を前提に解説します。
例えば,メーカーが販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を締結して,商品を製造して,販売店を通じて販売している場合に,その商品に欠陥があり,その欠陥が原因となって人が怪我をしたり死亡したりした場合,メーカーは自身に過失がなくとも損害賠償などの製造物責任(無過失責任)(Strict Liability)を負います。
では,ユーザーが異常な使い方でその商品を使ったために怪我をしたという場合まで,メーカーは責任を負うのでしょうか。
これは,通常予見される使用形態(normal use)でそのユーザーが使用したといえるかで変わってきます。
もし,そのユーザーの使用方法が,通常予見できないような(unforeseeable)異常な使い方をして怪我をしたのであれば,メーカーに責任はないことになります。
反対に,本来想定された使用法ではないけれども,その商品をそのユーザーが使ったような方法で使用することは通常予見できる(foreseeable)ということであれば,メーカーは責任を負うということになります。
誤用(misuse)といっても良いです。
本来の想定されている使用方法とは違う方法でユーザーが商品を使用して怪我をしたのであれば,それは自己責任であるという考え方は理解しやすいかと思います。
ただ,上記の説明でおわかりのとおり,これらの,通常の使用形態かどうか,通常予見可能かどうかというのは,基準があいまいです。
どこからどこまでが通常の使用方法なのか,どこからどこまでが通常予見可能かどうかの明確な判断基準はありません。
例えば,複数人が同じような「異常な」方法によりその商品を使用したということであれば,通常予見可能だったといえるのでしょう。
ただ,やはり基準があいまいですと,メーカーの立場は不安定になります。
そのため,メーカーが想定しない使用方法をできるだけユーザーがしないように,そして,万が一ユーザーが通常の使用方法以外の方法で商品を使用して怪我した場合でもメーカーが責任を負わないように,きちんと商品の使用方法と,禁止事項を説明書などに具体的に明確に記載すべきということになります。
これは,日本のメーカーが,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)で海外の販売店(Distributor)に,海外市場で商品を販売展開する場合も,同様です。
各国の製造物責任法(PL法)で違いはありますが,要するに,製品のそのものの欠陥だけではなく,使用上の注意や指示に関して欠陥がある場合も,メーカーに製造物責任が生じることがありえるからです。
そのため,メーカーとしては,仕様に合致して安全な商品を作って安心するのではなく,使用方法や使用上の注意などにも気を配り,海外市場で製造物責任を生じることのないようにしておく必要があります。
製品は使用されてはじめて価値が生まれることが多いため,安全に使用できるところまでサポートされていてはじめて完全な商品になるということです。
そのように対処しておくことにより,万一,ユーザーが指示されている使用方法以外の方法で仕様をして怪我をしたということになっても,メーカーには責任がないと判断されやすくなります。
製造物責任は,認められてしまうと,損害が多大になり,ビジネス上の損失が大きくなるばかりではなく,企業のレピュテーションにも大きな損害を与えることになります。
そのため,特に,人の生命身体に影響を与えるような商品を製造しているメーカーは,製造物責任対策をしっかりととらなければなりません。
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