Empower(英文契約書用語の弁護士による解説)
英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Empowerがあります。
これは,英文契約書で使用される場合,通常,「…に権限を与える」という意味で使用されます。
一方の当事者が他方の当事者にある行為をする権利を与えるような場合に,A Party shall empower the other to...などとしてempowerが使われることがあります。
例えば,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)などで,メーカーが販売店(Distributor)にPL保険(生産物賠償責任保険)の加入を義務付ける条項が入っていたとします。
この場合に「もし販売店が加入をしない場合,販売店に代わってメーカーが販売店のために保険に加入する」というような内容でempowrが登場することがあります。
このように,empowerはある行為について他人に対し代理権を付与することに繋がるため,非常に利害関係の強い英文契約書用語といえます。
この用語で権利を与える側の当事者は,本当にそのような権限を与えて問題ないか,権限を与えるにしてもその権限をあまりに自由に行使できないように制限が課されているかを十分にチェックする必要があります。
前述した例のように,自社で保険に加入すればメーカーに代理権を与えなくて済むような場合は,なるべく代理権を与えずに自社で対応するようにするのがベターでしょう。
一般的に他者に代理権を与えるのはトラブルを招きやすくなるのでおすすめできません。
代理権を他社に与えるということは,その他社が行った法律行為の効果が自社に帰属するということですので,リスクが高いことがわかると思います。
特に海外取引では,法律も商慣習も文化も異なる取引先に代理権を与えるなどとなりかねず,より一層危険な行為ということになります。
どうしても権限を移譲しなければならない場合でも,問題ないレベルまでその権限を制限し,自社でもコントロールできるようにするようにしましょう。