Representative(英文契約書用語の弁護士による解説)
英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Representativeがあります。
これは,英文契約書で使用される場合,通常,「代表者/担当者」という意味で使用されます。
これと決まった意味があるわけではなく,文脈によってどういう人を指しているのかを考える必要がある用語の一つといえるでしょう。
例えば,契約書に最後に署名する人を指してrepresentativeと呼んだ場合,会社を代理して契約を締結する権限を持つ代表者という意味なので,日本であれば代表取締役を通常指します。
Representative directorと表現すれば,「代表取締役」という意味になります。
これは,会社を代理/代表する権利を持っている人を指していることになります。
これに対し,sales representativeのように表現した場合,こちらはセールスの「担当者」という意味で理解したほうが理解しやすいでしょう。
Sales representativeは,日本語で「セールスレップ」や「レップ」とも呼ばれています。
こちらの意味は,その会社を代理/代表する権利を与えられているわけではなく,その会社のために一定の活動を許可されている立場にある者を指します。
上記の例のsales representativeであれば,依頼した会社のためにセールスの営業活動をする個人や法人を指すことになります。
依頼した会社の商品について営業・販促活動を行い,商品が顧客に売れたら,その代金の一部を手数料(commission)としてもらえるというのがsales representativeの典型的なパターンになります。
ここで問題になるのは,セールスレップに対し,顧客が商品を買いたいと言ってきた場合に,セールスレップがその商品を顧客に売却する代理権を持っているかということです。
もしセールスレップが代理権を持っているとなると,セールスレップが依頼した会社(売主)に代わって商品を顧客に売ってしまうことができます。
これに対し,代理権を持っていない場合は,あくまで商品を売るのは売主であり,売主が商品を売るという判断をしない限り,セールスレップは売主を代理して商品を売ることはできないことになります。
そして,通常,sales representative(セールスレップ)は売主を代理する権限は持っていません。
そのため,セールスレップが売主に代わって商品を売ることはできないと考えられています。
つまり,representativeという表現がされた場合,代理権がある場合とない場合の両方の可能性があるため,注意してチェックしたほうが良いということになります。
上記の例でいうと,representative directorにはその会社の代理権(代表権)がありますが,sales representativeには通常依頼した会社を代理する権利はありません。
ちなみに,似て非なる用語としてagentがあります。
こちらは英文契約書で使用される場合,通常は代理権を持った人を指します。
例えば,sales agentとした場合,売主に代わって売主のために顧客と売買契約を締結する権限をもった代理店を指すことが一般的です。
もっとも,このような用語は必ずしも厳密に区別して使われていないのが現場ですので,要するに何が言いたいのかを大筋で捉えるという姿勢も大切になってきます。