インドネシアの法制度
日本企業が販売代理店(Distributor)を指名してインドネシアに進出する際,以下のようなインドネシアの法制度に注意したほうが良いでしょう。
① 販売店(代理店)保護法
インドネシアには,いわゆる販売店(代理店)保護法に相当する法律そのものは存在していません。
そのため,販売店契約を締結した場合に,契約を終了するのに一定の猶予期間を設けなければならないなどの制約は直接的には定められていません。
ただし,インドネシア民法1266条に注意が必要です。同条は,販売店契約を解除する際には,たとえインドネシア企業の債務不履行を原因とするものであっても,インドネシア裁判所の訴訟を経て命令により解除しなければならないとしているからです。
したがって,準拠法がインドネシア法となっている場合には,インドネシア民法1266条(および1267条)の適用を契約書で放棄しておくほうが無難といえるでしょう。
② 登録制度
インドネシアでは,外国のサプライヤーから指名を受けた販売店は,販売店契約について商業省から登録証(STP)の発行を受ける必要があるとされています(商業大臣規則2021年第24号)。
そして,例えば,日本のサプライヤーが現在の販売店(Distributor)との間の販売店契約を解消して新たな販売店を指名したいと考えても,原則として,旧販売店との契約終了に伴う清算(いわゆるクリーンブレイク)が完了しない限り,新たな販売店の登録はできないとされています。もっとも,現行の規則では,契約終了から3か月以内に清算がまとまらない場合には旧販売店の登録は効力を失い,新たな販売店を登録できるとされているようです。
この登録規制により,実質的に旧販売店が一定程度保護されていることになりますので,販売代理店を変更する際には注意が必要です。
③ 言語
インドネシア法人が契約当事者となる場合,原則としてインドネシア語で契約書を作成しなければならないというルールがあり(2009年法律第24号31条),外国の当事者との契約では,インドネシア語に加えて相手方の言語または英語でも作成することとされています。また,上記の商業大臣規則では,販売店契約が外国語のみで作成されている場合には,宣誓翻訳人によるインドネシア語訳が必要とされています。実務上は,インドネシア語と英語(または日本語)を併記して作成するのが無難です。
この場合に,外国語(英語や日本語)の内容とインドネシア語の内容とが矛盾したとき,どちらの言語の内容が優先するかが問題になります。
この点,2019年の大統領規則第63号(26条4項)では,言語間で解釈に相違がある場合には契約で合意した言語が優先するとされており,外国語を優先させる条項を置くことも可能と考えられています。ただし,インドネシア語版のない英文の契約書(金銭消費貸借契約)が言語法違反を理由に無効とされ,最高裁判所でもその判断が維持された事例(2015年)があるため,必ずインドネシア語版も作成しておくべきでしょう。
④ 準拠法・紛争解決
インドネシアでは,準拠法をインドネシア法にしなければならないという規制はないため,外国法を準拠法とすることも可能です。
ただし,紛争解決については,外国の裁判所の判決をインドネシア国内で執行することはできないため,外国の裁判を選択することは実効性がありません。
また,インドネシアの司法制度は残念ながら成熟しているとはいい難い面があるとされているため,インドネシアの裁判を紛争解決手段として選択することもあまりおすすめできません。
そのため,日本企業とインドネシアの企業との間の販売店契約の場合,実務的には,第三国であるシンガポール法を準拠法とし,シンガポール国際仲裁センター(SIAC)を紛争解決機関として選定するということが広く行われています。
以上が,日本企業がインドネシア企業を販売店として指名し同国に進出を考える際に最低限知っておいたほうがよい法制度の概要です。
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