シンガポールの法制度
日本企業が販売代理店(Distributor)を指名してシンガポールに進出する際,以下のようなシンガポールの法制度に注意したほうが良いでしょう。
① 販売店(代理店)保護法
シンガポールは歴史的に英国法の影響を受けた,コモンローの法体系に属する国です。
シンガポールには,いわゆる販売店(代理店)保護法として独自に販売店や代理店を保護するために制定された法律は存在していません。
そのため,販売店契約を締結した場合に,契約の終了をするのに一定の猶予期間を設けなければならないなどの制約は直接的には定められていません。
日本の民法・商法に相当するシンガポールの法律には販売代理店契約に適用される法律で,いわゆる「強行法規/強行規定」として,当事者の合意に優先して適用される重要な内容は,原則としてないと考えて良いかと思います。
そのため,シンガポールの法律とは異なる内容でも,契約書で明確に定めておけば原則として契約書の内容のとおり効果が認められると考えて良いでしょう。
したがって,販売代理店契約の終了に関してサプライヤーがよく挿入する傾向にある
①中途解約条項,
②債務不履行解除条項,
③期間満了による契約終了条項(更新拒絶条項)
なども,基本的には契約書に定めたとおりに効果が得られると考えて良いかと思います。
また,販売代理店契約では,契約終了を理由に,販売店(Distributor)がサプライヤーに対して補償金などの支払いを要求してくることがありますが,この類の請求は一切認められない旨を契約書に記載することも多いです。
この点については,シンガポールには,Unfair Contract Terms Act(不公正契約条項法)という法律があるので,こちらに違反するとして販売代理店から主張されると,場合によっては条項が無効化するおそれがあるので一応注意が必要です。
② 登録制度
シンガポールでは,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を当局に登録しなければならないという制度はありません。
そのため,当局への登録が原因で,旧販売店との契約を解消して新販売店との契約に移行するのが困難になるなどの事情も存在しないといえます。
③ 言語
シンガポールでは公用語の一つが英語ですので,英文契約書で問題なく通用します。
④ 準拠法・紛争解決
シンガポールでは,準拠法をシンガポール法にしなければならないという規制はないため,外国法を準拠法とすることも可能です。
ただ,紛争解決については,シンガポールは積極的に国際紛争を受け入れているという事情もあるので,シンガポール法を準拠法とし,シンガポール国際仲裁センター(SIAC)を紛争解決機関として選定するということも日本企業との取引で広く行われています。
以上が,日本企業がシンガポール企業を販売店として指名し同国に進出を考える際に最低限知っておいたほうがよい法制度の概要です。
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