シンガポールの法制度|販売店契約で注意すべき4つのポイント
日本企業が販売店(Distributor)を指名してシンガポールに進出する際は,以下のようなシンガポールの法制度に注意したほうがよいでしょう。
シンガポールの法制度 早見表
| 法体系 | コモン・ロー(英国法の影響) |
|---|---|
| 販売店の保護 | 販売店保護法はなく,契約の定めが原則優先(不公正契約条項法に一応注意) |
| 契約の登録 | 不要 |
| 言語の規制 | なし(英語が公用語の一つで,英文契約書で通用) |
| 準拠法・紛争解決 | 外国法も選択可。シンガポール法・SIAC仲裁とすることも広く行われている |
こんな方に:シンガポール企業を販売店・代理店に指名しようとしている方,シンガポール企業から販売店契約のドラフトを受け取った方
① 販売店(代理店)保護法
シンガポールは歴史的に英国法の影響を受けた,コモン・ローの法体系に属する国です。シンガポールには,いわゆる販売店(代理店)保護法として,販売店や代理店を保護するために独自に制定された法律は存在していません。そのため,販売店契約を締結した場合に,契約を終了するのに一定の猶予期間を設けなければならないなどの制約は直接的には定められていません。
日本の民法・商法に相当するシンガポールの法律には,販売店契約に適用される規定のうち,いわゆる「強行法規/強行規定」として当事者の合意に優先して適用される重要なものは,原則としてないと考えてよいかと思います。そのため,シンガポールの法律とは異なる内容でも,契約書で明確に定めておけば,原則として契約書の内容のとおり効果が認められると考えてよいでしょう。
したがって,販売店契約の終了に関してサプライヤーがよく挿入する傾向にある中途解約条項,債務不履行解除条項,期間満了による契約終了条項(更新拒絶条項)なども,基本的には契約書に定めたとおりに効果が得られると考えてよいかと思います。また,販売店契約では,契約終了を理由に,販売店(Distributor)がサプライヤーに対して補償金などの支払いを要求してくることがあります。そこで,この類の請求は一切認められない旨を契約書に記載することも多いです。
実務上のポイント:この点については,シンガポールにもUnfair Contract Terms Act(不公正契約条項法)という法律があります。同法は主に責任を免除・制限する条項を規制するもので,一方当事者の標準約款によって契約した場合などには,合理性のない条項が無効とされることがあるので,一応注意が必要です。
もっとも,同法には,国際的な物品供給契約についての適用除外(26条)や,当事者の選択のみによってシンガポール法が準拠法となる場合の適用制限(27条)もあります。
② 登録制度
シンガポールでは,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を当局に登録しなければならないという制度はありません。そのため,当局への登録が原因で,旧販売店との契約を解消して新販売店との契約に移行するのが困難になるなどの事情も存在しないといえます。
③ 言語
シンガポールでは公用語の一つが英語ですので,英文契約書で問題なく通用します。
④ 準拠法・紛争解決
シンガポールでは,準拠法をシンガポール法にしなければならないという規制はないため,外国法を準拠法とすることも可能です。ただ,紛争解決については,シンガポールは積極的に国際紛争を受け入れているという事情もあるので,シンガポール法を準拠法とし,シンガポール国際仲裁センター(SIAC)を紛争解決機関として選定することも,日本企業との取引で広く行われています。
シンガポールの販売店と契約する前に確認したいポイント
- ✓中途解約・債務不履行解除・期間満了による終了の各条項を明確に定めているか
- ✓契約終了時の補償金請求を認めない旨を契約書に記載しているか
- ✓標準約款を用いる場合,免責・責任制限条項が不公正契約条項法との関係で合理的といえるか
- ✓準拠法・紛争解決(シンガポール法・SIAC仲裁を求められた場合の対応)
【ご注意】本記事は,執筆・更新時点において一般的なレベルで調査した結果を参考情報として記載したものにすぎず,個別の案件についての法的助言ではありません。各国の法令・判例・実務は改正等により変更されることがあり,本記事の内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。実際にお取引を検討される際は,必ず現地の法律に精通した弁護士に最新の情報をご確認ください。
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弁護士 菊地正登(片山法律会計事務所)/相談・案件実績 2,931件