中国の法制度
日本企業が販売代理店(Distributor)を指名して中国に進出する際,以下のような中国の法制度に注意したほうが良いでしょう。
① 販売店(代理店)保護法
中国には,いわゆる販売店(代理店)保護法として独自に販売店や代理店を保護するために制定された法律は存在していません。
そのため,販売店契約を締結した場合に,契約の終了をするのに一定の猶予期間を設けなければならないなどの制約は直接的には定められていません。
日本の民法・商法に相当する中国の法律には販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)に適用される法律で,いわゆる「強行法規/強行規定」として,当事者の合意に優先して適用される重要な内容は,原則としてないと考えて良いかと思います。
そのため,中国の法律とは異なる内容でも,契約書で明確に定めておけば原則として契約書の内容のとおり効果が認められると考えて良いでしょう。
したがって,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の終了に関してサプライヤーがよく挿入する傾向にある
①中途解約条項,
②債務不履行解除条項,
③期間満了による契約終了条項(更新拒絶条項)
なども,基本的には契約書に定めたとおりに効果が得られると考えて良いかと思います。
また,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)では,契約終了を理由に,販売店(Distributor)がサプライヤーに対して補償金などの支払いを要求してくることがありますが,この類の請求は一切認められない旨を契約書に記載することも多いですが,この点に関してもこれを禁止するような法律の内容はないと考えて良いでしょう。
ただし,中国の契約法には,当事者の公平性を要求する規定があり,もし日本企業が中国企業よりも優越する地位にあり,その立場を利用して一方的に自社に有利に契約条項を定めたことが明らかであると認められると,条項の変更や取り消しを裁判所や仲裁機関に請求されるおそれがあるので,念のため注意が必要です。
さらに,日本企業が自社が使用しているひな形を販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)として中国企業との間で使用する場合は注意が必要です。
というのは,中国には当事者の一方が予め作成した約款(「様式約款」と呼ばれます)を使用するときは,自社の免責条項や責任制限条項について相手方の注意喚起をし,相手方の要求に応じて説明する責任があるなどとされているからです。
日本企業が使用しているひな形が上記の様式約款とみなされ,これらの義務に違反すると,中国企業から条項の無効を主張される可能性があります。
また,もし様式約款の内容に曖昧な部分があり,解釈に争いが生じた場合は,起草者に不利に解釈されるというルールもあります。
なお,中国進出の場合,ために報道で見かけるとおり,模倣問題が起こりうるため,進出前に商標登録などは済ませておくことが必要です。
② 登録制度
中国には,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を当局に登録しなければならないという制度はありません。
そのため,当局への登録が原因で,旧販売店との契約を解消して新販売店との契約に移行するのが困難になるなどの事情も存在しないといえます。
③ 言語
販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)については,契約書の言語を特に制限する法律はないので,英語や日本語などの外国語のみでも契約書を作成することが可能です。
④ 準拠法・紛争解決
中国には,準拠法を中国法にしなければならないという規制はないため,外国法を準拠法とすることも可能です。
もっとも,中国企業の立場が優位になることも多く,その場合は事実上中国法を準拠法とせざるを得ない場面もあります。
また,紛争解決については,日本の裁判所の判決中国で執行することはできない(中国の判決を日本で強制執行することもできないとされています)ため,強制執行を考えると日本の裁判所を紛争解決機関とすることは避けるべきです。
そのため,日本企業と中国の企業との間の販売店契約の場合,実務的には,日本の商事仲裁協会(JCAA),中国国際経済貿易仲裁委員会(CIETAC),香港国際仲裁センター(HKIAC),シンガポール国際仲裁センター(SIAC)などが紛争解決機関として選択されています。
以上が,日本企業が中国企業を販売店として指名し同国に進出を考える際に最低限知っておいたほうがよい法制度の概要です。
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