ベトナムの法制度
日本企業が販売代理店(Distributor)を指名してベトナムに進出する際,以下のようなベトナムの法制度に注意したほうが良いでしょう。
① 販売店(代理店)保護法
ベトナムには,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)について,いわゆる販売店保護法のような特別な法律は存在していません。
ただし,代理店契約(Agency Agreement)については,ベトナムの商法の特別な規定が適用されます。
この特別法では,例えば,①代理店は他のサプライヤーとの間で代理店契約を締結する権利を有する(つまりデフォルトでは非独占販売店契約が前提となっている)とされていたり,②サプライヤーが代理店契約を解除するためには,少なくとも60日の猶予期間を設けて解除を通知する必要があるとされていたり,③サプライヤーが代理店契約を解除した場合,代理店はサプライヤーに対して損害賠償請求ができるとされていたりします。
もっとも,これらは当事者の合意により排除できるとされていますので,サプライヤーと代理店が締結する代理店契約書でこれらを明確に排除しておけば,適用を免れることになります。
また上記特別法は販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)には適用されないため,販売店解約に関し,
①中途解約条項,
②債務不履行解除条項,
③期間満了による契約終了条項(更新拒絶条項)
などを挿入しても,基本的には契約書に定めたとおりに認められます。
また,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)では,契約終了を理由に,販売店(Distributor)がサプライヤーに対して補償金などの支払いを要求してくることがありますが,この類の請求は一切認められない旨を契約書に記載することも多いですが,この点に関しても効果が認められると考えて良いでしょう。
② 登録制度
ベトナムでは,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を当局に登録しなければならないという制度はありません。
そのため,当局への登録が原因で,旧販売店との契約を解消して新販売店との契約に移行するのが困難になるなどの事情も存在しないといえます。
③ 言語
販売店契約や代理店契約の契約書の言語を特に制限する法律はないので,英語などの外国語のみでも契約書を作成することが可能です。
④ 準拠法・紛争解決
ベトナムでは,準拠法をベトナム法にしなければならないという規制はないため,外国法を準拠法とすることも可能です。
ただし,紛争解決については,日本の裁判所の判決をベトナム国内で執行することは事実上不可能であるため,強制執行を考えると日本の裁判所以外の手段が良いかもしれません。
また,ベトナムの司法制度は残念ながら成熟しているとはいい難い面があると指摘されているため,ベトナムの裁判を紛争解決手段として選択することもあまりおすすめできません。
そのため,日本企業とタイの企業との間の販売店契約の場合,実務的には,ベトナム国際仲裁センター(VIAC)を仲裁機関としたり,第三国のシンガポール国際仲裁センター(SIAC)を選定するということも多く行われています。
後者のように外国の仲裁を利用する場合,仲裁判断の執行についてはベトナムの裁判所による承認が必要となるとされており,裁判所が契約書の不備などを指摘して,仲裁判断の執行を認めないということがあるとも言われているので,注意が必要です。
以上が,日本企業がベトナム企業を販売店として指名し同国に進出を考える際に最低限知っておいたほうがよい法制度の概要です。
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