ベトナムの法制度|販売店契約で注意すべき4つのポイント

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日本企業が販売店(Distributor)を指名してベトナムに進出する際は,以下のようなベトナムの法制度に注意したほうがよいでしょう。

ベトナムの法制度 早見表

販売店の保護販売店保護法はない(代理店には商法の規定があるが合意で排除可能)
契約の登録不要
言語の規制なし(英語のみでも作成可能)
準拠法・紛争解決外国法も選択可。VIACやSIACでの仲裁が多い(外国仲裁判断は裁判所の承認が必要)

こんな方に:ベトナム企業を販売店・代理店に指名しようとしている方,ベトナム企業から販売店契約のドラフトを受け取った方

① 販売店(代理店)保護法

ベトナムには,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)について,いわゆる販売店保護法のような特別な法律は存在していません。ただし,代理店契約(Agency Agreement)については,ベトナムの商法の特別な規定が適用されます。

この特別法では,例えば,①代理店は他のサプライヤーとの間で代理店契約を締結する権利を有する(つまりデフォルトでは非独占の代理店契約が前提となっている)とされていたり,②サプライヤーが代理店契約を解除するためには,少なくとも60日の猶予期間を設けて解除を通知する必要があるとされていたり,③サプライヤーの申し出により代理店契約が終了した場合,代理店はサプライヤーに対し,代理店として活動した期間に応じた補償金(1年につき1か月分の平均報酬相当額)を請求できるとされていたりします(商法174条1項,177条)。

実務上のポイント:もっとも,これらは当事者の合意により排除できるとされていますので,サプライヤーと代理店が締結する代理店契約書でこれらを明確に排除しておけば,適用を免れることになります。

また,上記特別法は販売店契約には適用されないため,販売店契約の解約に関し,①中途解約条項,②債務不履行解除条項,③期間満了による契約終了条項(更新拒絶条項)などを挿入しても,基本的には契約書に定めたとおりに認められます。

さらに,販売店契約では,契約終了を理由に,販売店(Distributor)がサプライヤーに対して補償金などの支払いを要求してくることがあります。そこで,この類の請求は一切認められない旨を契約書に記載することも多いですが,この点に関しても効果が認められると考えてよいでしょう。

ベトナムの販売店・代理店との契約書,解約予告期間や補償金の定めは大丈夫ですか?

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② 登録制度

ベトナムでは,販売店契約を当局に登録しなければならないという制度はありません。そのため,当局への登録が原因で,旧販売店との契約を解消して新販売店との契約に移行するのが困難になるなどの事情も存在しないといえます。

③ 言語

販売店契約や代理店契約の契約書の言語を特に制限する法律はないので,英語などの外国語のみでも契約書を作成することが可能です。

④ 準拠法・紛争解決

ベトナムでは,準拠法をベトナム法にしなければならないという規制はないため,外国法を準拠法とすることも可能です。ただし,紛争解決については,日本の裁判所の判決をベトナム国内で執行することは事実上不可能であるため,強制執行を考えると日本の裁判所以外の手段がよいかもしれません。

また,ベトナムの司法制度は残念ながら成熟しているとはいい難い面があると指摘されているため,ベトナムの裁判を紛争解決手段として選択することもあまりおすすめできません。そのため,日本企業とベトナムの企業との間の販売店契約の場合,実務的には,ベトナム国際仲裁センター(VIAC)を仲裁機関としたり,第三国のシンガポール国際仲裁センター(SIAC)を選定したりするということも多く行われています。

実務上のポイント:後者のように外国の仲裁を利用する場合,仲裁判断の執行についてはベトナムの裁判所による承認が必要となるとされており,裁判所が契約書の不備などを指摘して,仲裁判断の執行を認めないということがあるとも言われているので,注意が必要です。

ベトナムの販売店と契約する前に確認したいポイント

  • ✓契約が販売店契約か代理店契約か(代理店契約なら商法の規定の適用を排除しているか)
  • ✓中途解約・債務不履行解除・更新拒絶の各条項と,補償金請求を認めない旨の定め
  • ✓紛争解決をVIACまたはSIACでの仲裁とするか
  • ✓外国仲裁判断の承認で問題とされないよう,仲裁条項などに不備がないか

【ご注意】本記事は,執筆・更新時点において一般的なレベルで調査した結果を参考情報として記載したものにすぎず,個別の案件についての法的助言ではありません。各国の法令・判例・実務は改正等により変更されることがあり,本記事の内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。実際にお取引を検討される際は,必ず現地の法律に精通した弁護士に最新の情報をご確認ください。

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弁護士 菊地正登(片山法律会計事務所)/相談・案件実績 2,931件

執筆 弁護士 菊地正登(第二東京弁護士会/片山法律会計事務所)

2003年弁護士登録。英国 University of Southampton のLL.M(法学修士)コースワークで英米法・国際取引法等を学び,ロンドンの法律事務所 Hill Dickinson LLP で実務経験。英文契約書・国際取引を中心に取り扱っています。プロフィール

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