ニューヨーク条約|外国企業に仲裁判断を執行できるか
この記事のポイント
- ニューヨーク条約は,加盟国間で外国仲裁判断の承認・執行を容易にするための条約
- 日本も加盟しており,日本で得た仲裁判断で加盟国にある相手方の財産に強制執行しやすくなる
- 仲裁で解決できない事項や公序に反する場合には,承認・執行が拒否されることがある
こんな方に:海外企業との英文契約で,紛争解決を裁判にするか仲裁にするかを検討している日本企業の方
1. ニューヨーク条約とは
「ニューヨーク条約」は通称で,正式にはConvention on the Recognition and Enforcement of Foreign Arbitral Awards(New York, 1958),日本語名称は「外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約」(昭和36年条約第10号)といいます。和文テキストは国際私法学会のウェブサイトなどで確認することができます。
この条約は,簡単に言うと,加盟国間において,仲裁判断(Arbitral Award)の執行を容易にするために定められたものです。
2. 仲裁判断とは
仲裁判断というのは,裁判外紛争解決手続(ADR)の一つである仲裁(Arbitration)の裁定をいい,裁判でいうところの判決に相当するものです。この仲裁判断を根拠に,相手の財産を差し押さえたりする強制執行というものができることになります。
3. 外国での承認・執行を容易にする仕組み
ただ,相手が外国の企業ですと,例えば,日本で得た仲裁判断をそのまま外国で承認してもらい執行することは,ルールが違うためできません。この外国仲裁判断の承認・執行を簡単にするために,ニューヨーク条約加盟国であれば仲裁判断の承認・執行を原則として認めるということになりました。
外国仲裁判断の承認・執行というのは,外国仲裁判断の効力を認めて,これに基づく強制執行を裁判所が行うことを指しています。
日本もこのニューヨーク条約に加盟しています。そのため,例えば,日本商事仲裁協会(JCAA)において取得した仲裁判断に基づき,同条約加盟国内にある相手方企業の財産に対し,判決に比べて容易な手続きにより強制執行をすることができるということになります。
4. 承認・執行が拒否される場合
なお,ニューヨーク条約第5条2項では,次のいずれかに該当するときには,裁判所は職権によって,その仲裁判断の承認・執行を拒否することができるとされています。
| 拒否事由(第5条2項) | 内容 |
|---|---|
| 仲裁可能性 | 自国の法律によれば仲裁による解決が不可能である事項に関する仲裁判断であること |
| 公序 | 承認・執行をすることが自国の公序に反すること |
実務上のポイント:例えば,外国でなされた仲裁判断が,日本の公序良俗に反するような内容であれば,例外的に日本での仲裁判断の執行ができないということはありえます。
5. 英文契約書で仲裁条項が多く使われる理由
国際取引で使用される英文契約書で,裁判管轄(Jurisdiction)よりも仲裁(Arbitration)の条項を多く見るのは,上述したニューヨーク条約による強制執行の容易さが理由の一つです。相手方の国がニューヨーク条約に加盟しているかどうかは,公表されている加盟国一覧で確認することができます。
契約書で確認したいポイント
- ✓相手方の所在国(財産のある国)がニューヨーク条約の加盟国か
- ✓紛争解決条項が裁判管轄と仲裁のどちらになっているか
- ✓仲裁とする場合,仲裁機関・仲裁地・仲裁規則が明記されているか
- ✓対象となる紛争が,執行先の国で仲裁により解決できる事項か
【ご注意】本記事は,執筆・更新時点において一般的なレベルで調査した結果を参考情報として記載したものにすぎず,個別の案件についての法的助言ではありません。各国の法令・判例・実務は改正等により変更されることがあり,本記事の内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。実際にお取引を検討される際は,必ず現地の法律に精通した弁護士に最新の情報をご確認ください。
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弁護士 菊地正登(片山法律会計事務所)/相談・案件実績 2,931件