アメリカの法制度
日本企業が販売代理店(Distributor)を指名してアメリカ(U.S.A.)に進出する際,以下のようなアメリカの法制度に注意したほうが良いでしょう。
① 販売店(代理店)保護法
アメリカは,イギリスから独立した経緯を持つため,イギリス法の影響を受けたコモンローの法体系に属する国の一つです。
もっとも,アメリカは州制度を採用しているので,連邦法と州法と2つの法体系を有し,一口にアメリカ法といっても州によってかなり法律の内容が異なります。
弁護士資格も州ごとに付与されていることを見ても,各州によって法制度が異なることは理解できるでしょう。
そのため,アメリカの法律を調査する際は,州レベルで調査をする必要があることに注意しなければなりません。
なお,アメリカには,いわゆる販売店(代理店)保護法として販売店や代理店を一般的に保護するために制定された連邦法は存在していません。もっとも,州法レベルでは,ウィスコンシン州のFair Dealership Lawのように販売店(ディーラー)を保護する法律を設けている州もあるため,対象となる州の州法を確認する必要があります。
さらに,商標の使用許諾,サプライヤーによる重要な統制・支援,一定額以上の支払い(FTCフランチャイズ規則上,営業開始前から開始後6か月以内の支払総額が735米ドル以上)という要件をすべて満たす場合には,販売店契約であっても「フランチャイズ」に該当し,連邦取引委員会(FTC)のフランチャイズ規則上の開示義務や,州法上の登録・開示義務が生じることがあるので注意が必要です(通常の卸売価格での商品の購入は,原則としてこの支払いには当たらないとされています)。
また,販売店契約のうち物品の売買に関する部分には,一般に,各州が統一商事法典(Uniform Commercial Code: UCC)の第2編をもとに制定した州法が適用されます(ルイジアナ州など一部例外があります)。
販売店保護法制を持つ州の場合や,業種別のディーラー保護法(自動車,酒類,農機具など),フランチャイズ関係の法律が適用される場合を除き,販売店(代理店)保護法のような強行法規/強行規定はないため,各州の法律とは異なる内容でも,契約書で明確に定めておけば原則として契約書の内容のとおり効果が認められると考えて良いでしょう。ただし,統一商事法典(UCC)2-309条(3)は,合意された事由の発生による場合を除き,一方当事者が契約を終了させるには相手方への合理的な通知を要するとしており,通知を不要とする合意は,その適用が非良心的(unconscionable)となる場合には無効とされます。
このような制約はあるものの,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の終了に関してサプライヤーがよく挿入する傾向にある
①中途解約条項,
②債務不履行解除条項,③契約期間の満了による終了条項(更新拒絶条項)
なども,基本的には契約書に定めたとおりに効果が得られると考えて良いかと思います。
ただし,米国にも当事者の合意に優先して適用される反トラスト法(独占禁止法)が存在します。サプライヤーが単独で取引を拒絶することは原則として適法とされていますが,販売店契約の解除や更新拒絶が他の販売店との共謀や再販売価格の拘束に基づくものであるとして,販売店がシャーマン法違反などを主張してくることが考えられます。
② 登録制度
アメリカでは,連邦法において販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を当局に登録しなければならないという制度はありません。
ただし,販売店契約がフランチャイズやビジネス・オポチュニティに該当する場合には,一部の州法上,開示書面などの当局への登録が必要となることがあるので注意が必要です。
③ 言語
言うまでもありませんが,公用語が英語ですので英文契約書の締結が可能です。
④ 準拠法・紛争解決
前述したとおり,アメリカでは州法が存在するので準拠法をアメリカ法にする場合,U.S.A.の法律というのではなく,どの州の法律を準拠法とするのか(例えばカリフォルニア州)も選択する必要があります。
アメリカでの仲裁を選択することも多くあります。例えば,ニューヨーク州に本部があるアメリカ仲裁協会(American Arbitration Association:AAA)において仲裁を行うなどと取り決められることがあります。
以上が,日本企業がアメリカ企業を販売店として指名し同国に進出を考える際に最低限知っておいたほうがよい法制度の概要です。
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