アメリカの法制度
日本企業が販売代理店(Distributor)を指名してアメリカ(U.S.A)に進出する際,以下のようなアメリカの法制度に注意したほうが良いでしょう。
① 販売店(代理店)保護法
アメリカは,イギリスから独立した経緯を持つため,イギリス法の影響を受けたコモンローの法体系に属する国の一つです。
もっとも,アメリカは州制度を採用しているので,連邦法と州法と2つの法体系を有し,一口にアメリカ法といっても州によってかなり法律の内容が異なります。
弁護士資格も州ごとに付与されていることを見ても,各州によって法制度が異なることは理解できるでしょう。
そのため,アメリカの法律を調査する際は,州レベルで調査をする必要があることに注意しなければなりません。
なお,アメリカには,いわゆる販売店(代理店)保護法として独自に販売店や代理店を保護するために制定された法律は,連邦法または州法において存在していません。
そのため,アメリカでは,ほとんどの州でアメリカ統一商事法典(Uniform Commercial Code:UCC)を微修正した形で制定されている各州法が販売代理店契約に適用されるということになります。
上述した販売(代理)店保護法のような強行法規/強行規定はないため,各州の法律とは異なる内容でも,契約書で明確に定めておけば原則として契約書の内容のとおり効果が認められると考えて良いでしょう。
したがって,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の終了に関してサプライヤーがよく挿入する傾向にある
①中途解約条項,
②債務不履行解除条項,③契約期間の満了による終了条項(更新拒絶条項)
なども,基本的には契約書に定めたとおりに効果が得られると考えて良いかと思います。
ただし,日本同様に,当事者の合意に優先して適用される独占禁止法が存在するので,例えば,サプライヤーである日本企業が,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を解除したり,更新を拒絶したりした場合に,販売店(Distributor)が,これを不当な取引の拒絶に当たるとして,独占禁止法に反し違法であるなどと主張してくることが考えられます。
② 登録制度
アメリカでは,連邦法において販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を当局に登録しなければならないという制度はありません。
ただし,一部の州法では販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)に関する情報の一部を当局に登録しなければならないとしているので注意が必要です。
③ 言語
言うまでもありませんが,公用語が英語ですので英文契約書の締結が可能です。
④ 準拠法・紛争解決
前述したとおり,アメリカでは州法が存在するので準拠法をアメリカ法にする場合,U.S.Aの法律というのではなく,どの州の法律を準拠法とするのか(例えばカリフォルニア州)も選択する必要があります。
アメリカでの仲裁を選択することも多くあります。例えば,ニューヨーク州に本部があるアメリカ仲裁協会(American Arbitration Association:AAA)において仲裁を行うなどと取り決められることがあります。
以上が,日本企業がアメリカ企業を販売店として指名し同国に進出を考える際に最低限知っておいたほうがよい法制度の概要です。
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