イギリスの法制度
日本企業が販売代理店(Distributor)を指名してイギリス(イングランド)進出する際,以下のようなイギリスの法制度に注意したほうが良いでしょう。
① 販売店(代理店)保護法
イギリスは,当然ですが英国コモン・ローの法体系に属する国です。
もっとも,イギリスは,イングランド,北アイルランド,スコットランド,ウェールズからなっています。
そして,法律は,イングランドとウェールズ法,北アイルランド法,スコットランド法で3つに分かれていて,弁護士資格もこれらで別になっています。
そのため,イギリスの法律を調査する際は,上記の3つを区別して調査をする必要があることに注意しなければなりません。
以下では,イングランドとウェールズ法を前提に解説します。
イギリスには,いわゆる販売店保護法として独自に販売店を保護するために制定された法律は,存在していません。
他方で,代理店(Agent)を保護する法律は,ECC Council Directive(86/653)(Art.17)を受けて,Commercial Agents (Council Deirective) Regulations 1993(代理店法)が制定されています。
そのため,代理店契約の場合,サプライヤーからの中途解約の告知期間が短すぎるなどの場合,代理店法による規制を受けるということが考えられます。
もっとも,代理店法は,代理店契約(Agency Agreement)に対するものですので,純粋な(genuine)販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)については適用されません。
そのため,販売店契約に関しては,契約書で明確に定めておけば原則として契約書の内容のとおり効果が認められると考えて良いでしょう。
したがって,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の終了に関してサプライヤーがよく挿入する傾向にある①中途解約条項,②債務不履行解除条項,③契約期間の満了による終了条項(更新拒絶条項)なども,基本的には契約書に定めたとおりに効果が得られると考えて良いかと思います。
ただし,Unfair Contract Terms Act 1977(不公正契約条項法)という法律があり,同法では,一方当事者の契約のひな形が修正されずに締結されている場合,契約を一方的に終了させる条項については,合理性がなければ無効になるとされています。
そのため,日本企業がサプライヤーとしてイギリスの販売代理店に対し,自社のひな形をそのまま受け入れさせたような場合に,日本側の一方的な契約の解消条項が内容によっては合理性がないとされて無効になることがあり得るので,注意が必要です。
また,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)では,契約終了を理由に,販売店(Distributor)がサプライヤーに対して補償金などの支払いを要求してくることがありますが,この類の請求は一切認められない旨を契約書に記載することも多いですが,このような取り決めに関しても原則として有効になると考えて良いでしょう。
② 登録制度
イギリスでは,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を当局に登録しなければならないという制度はありません。
そのため,当局への登録が原因で,旧販売店との契約を解消して新販売店との契約に移行するのが困難になるなどの事情も存在しないといえます。
③ 言語
言うまでもありませんが,公用語が英語ですので英文契約書の締結が可能です。
④ 準拠法・紛争解決
前述したとおり,イギリスでは,イングランドとウェールズ法,北アイルランド法,スコットランド法が存在するので準拠法をイギリス法にする場合,UKの法律というのではなく,どの国の法律を準拠法とするのか(例えばイングランドとウェールズ法)を選択する必要があります。
イギリスでの仲裁を選択することも多くあります。例えば,ロンドン国際仲裁裁判所(London Court of International Arbitration: LCIA)において仲裁を行うなどと取り決められることがあります。
以上が,日本企業がイギリス企業を販売店として指名し同国に進出を考える際に最低限知っておいたほうがよい法制度の概要です。
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