ロシアの法制度
日本企業が販売代理店(Distributor)を指名してロシアに進出する際,以下のようなロシアの法制度に注意したほうが良いでしょう。
① 販売店(代理店)保護法
ロシアは,大陸法(シビルロー)に属する国の一つで,ロシアの民法はドイツ法の影響を受けていると言われます。
ロシアには,いわゆる販売店(代理店)保護法として独自に販売店や代理店を保護するために制定された法律は存在していません。
そのため,販売店契約を締結した場合に,契約の終了をするのに一定の猶予期間を設けなければならないなどの制約は直接的には定められていません。
日本の民法・商法に相当するロシアの法律には販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)に適用される法律で,いわゆる「強行法規/強行規定」として,当事者の合意に優先して適用される重要な内容は,原則としてないと考えて良いかと思います。
そのため,ロシアの法律とは異なる内容でも,契約書で明確に定めておけば原則として契約書の内容のとおり効果が認められると考えて良いでしょう。
したがって,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の終了に関してサプライヤーがよく挿入する傾向にある
①中途解約条項,
②債務不履行解除条項,
③期間満了による終了条項(更新拒絶条項)
なども,基本的には契約書に定めたとおりに効果が得られると考えて良いかと思います。
また,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)では,契約終了を理由に,販売店(Distributor)がサプライヤーに対して補償金などの支払いを要求してくることがありますが,この類の請求は認められない旨を契約書に記載することも多いですが,かかる条項も原則として有効と考えて良いでしょう。
ただし,サプライヤーと販売店の関連市場シェアが20%を超える場合には,ロシアの競争法によって公正な競争の障害となるような条項は無効になる可能性があるので注意が必要です。
なお,一概に言えませんが,ロシアでは模倣によるトラブルの報告がありますので,とりわけ,日本企業がロシアに進出する際には,事前に商標登録などをきちんとしておくことをおすすめします。
② 登録制度
ロシアでは,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を当局に登録しなければならないという制度はそのものはありません。
ただし,一定の商品をロシアの販売店が輸入する場合には,原則として販売店が一定の認証手続を経なければなりません。
したがって,認証手続きが必要な場合は,販売店の交替時に障害となるおそれがあるので注意が必要です。
③ 言語
契約書の言語を特に制限する法律はないので,英文契約書による契約締結が可能です。
④ 準拠法・紛争解決
ロシアでは,準拠法をロシア法にしなければならないという規制はないため,外国法を準拠法とすることも可能です。
ただし,紛争解決については,日本の裁判所の判決をそのままロシア国内で執行することはできないため,強制執行を考えると日本の裁判所以外の手段が良いかもしれません。
ロシアもニューヨーク条約加盟国であるため,日本企業とロシアの企業との間の販売店契約の場合,実務的には,ロンドン国際仲裁裁判所(London Court of International Arbitration: LCIA)を紛争解決機関として選定するということも多く行われています。
以上が,日本企業がロシア企業を販売店として指名し同国に進出を考える際に最低限知っておいたほうがよい法制度の概要です。
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