サウジアラビアの法制度

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 日本企業が販売代理店(Distributor)を指名してサウジアラビアに進出する際,以下のようなサウジアラビアの法制度に注意したほうが良いでしょう。

 

 ① 販売店(代理店)保護法

 サウジアラビアには,いわゆる代理店保護法(1962年の商業代理店法(勅令M/11)およびその施行規則)があり,代理店契約(Agency Agreement)や販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の代理店・販売店を保護しています。なお,2022年に商務省が新たな商業代理店法の草案を公表しており,期間の定めのない契約を解約する場合の予告期間(契約期間1年につき1か月)や補償,専門の紛争解決委員会の設置などが検討されていますが,2026年9月時点で施行は確認されていませんので,最新の動向に注意が必要です。

 

 そのため,日本企業がサウジアラビア企業を販売代理店として指名してサウジアラビア進出をする場合,事前にこの代理店保護法の内容を押さえて,どのようなリスクがあるかを把握しておく必要があります。

 

 例えば,サプライヤーが販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の更新を拒絶して,契約を終了させる場合,一定の要件を充たすと,サプライヤーが販売代理店に対して補償金(直接の損害でかつ証明されたもの)の支払いをしなければならないことがあります。

 

 ② 登録制度

 サウジアラビアには,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を当局に登録しなければならないという制度があります。

 

 そのため,当局への登録が原因で,旧販売店との契約を解消して新販売店との契約に移行するのが困難になるなどの事情も存在しえます。

 

 もっとも,この登録制度に違反しても販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)自体が無効になるわけではありません。

 

 また,登録をせずに販売店として活動した場合でも,外国のサプライヤーに対しては罰則は特に適用されません。

 

 こうした事情から,販売店(Distributor)が事実上登録をせずに活動をするということも現地では行われているようです。

 

 ③ 言語

 販売店契約書(Distribution/Distributorship Agreement)の言語を特に制限する法律はないので,英文で契約書を作成することが可能です。

 

 ただし,前述した販売店契約の登録については,アラビア語の契約書(または翻訳)をもって登録をしなければならないとされています。

 

 ④ 準拠法・紛争解決

 サウジアラビアでは,契約上は外国法を準拠法とすることも可能ですが,サウジアラビアの裁判所で紛争を解決する場合には,当事者が外国法を選択していても,裁判所はサウジアラビア法(シャリーア)を適用するとされていますので注意が必要です。

 

 サウジアラビアはニューヨーク条約加盟国です。

 

 そのため,日本企業とサウジアラビアの企業との間の販売店契約の場合,紛争解決については,強制執行の便宜を考え,裁判ではなく仲裁(Arbitration)を選択することも多いです。

 

 なお,前述した登録制度の関係では,販売店契約の準拠法を日本法とし,裁判管轄や仲裁を日本としたものは,当局が登録に積極的でないといわれています。

 

 以上が,日本企業がサウジアラビア企業を販売店として指名し同国に進出を考える際に最低限知っておいたほうがよい法制度の概要です。

【ご注意】本記事は,執筆・更新時点において一般的なレベルで調査した結果を参考情報として記載したものにすぎず,個別の案件についての法的助言ではありません。各国の法令・判例・実務は改正等により変更されることがあり,本記事の内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。実際にお取引を検討される際は,必ず現地の法律に精通した弁護士に最新の情報をご確認ください。
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執筆 弁護士 菊地正登(第二東京弁護士会/片山法律会計事務所)

2003年弁護士登録。英国 University of Southampton のLL.M(法学修士)コースワークで英米法・国際取引法等を学び,ロンドンの法律事務所 Hill Dickinson LLP で実務経験。英文契約書・国際取引を中心に取り扱っています。プロフィール

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