トルコの法制度
日本企業が販売代理店(Distributor)を指名してトルコに進出する際,以下のようなトルコの法制度に注意したほうが良いでしょう。
① 販売店(代理店)保護法
トルコは大陸法(シビル・ロー)の法体系に属する国の一つです。
トルコには,いわゆる販売店(代理店)保護法として販売店や代理店を保護するために特別に制定された法律は存在していません。
ただし,トルコの商法において,代理店や販売店を保護する「強行法規/強行規定」を置いているので注意が必要です。
「強行法規」というのは,当事者がその法律と異なる合意をしたとしても,法律の内容が優先する場合の法律のことをいいます。
つまり,当事者の合意でその法律の内容を変えたり,法律の適用を排除したりすることができないということです。
トルコの商法の一部がこの強行法規に該当します。そのため,例えば,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)で準拠法を日本法としているような場合でも,トルコの裁判所がその法律を強行的に適用することが可能ということになります。
その例が,販売店契約終了時のサプライヤーの販売店に対する補償金の支払義務です。
代理店契約(Agency Agreement)や独占的販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)を締結した場合,販売店(Distributor)が商品の販促活動を行い,商品のブランド価値などが高まります。
これを「のれん代」(Goodwill)と呼んだりします。
トルコの商法では,代理店契約や独占的販売店契約が終了した際に,一定の要件の下,のれん代(Goodwill)の補償として一定の金額をサプライヤーが販売店等に支払わなければならないとされているのです。
そして,前述のとおり,この補償規定は強行法規として当事者の合意により適用を排除することができないと言われています。
この補償金の支払いの事例として有名なのは,2008年の韓国の著名企業LGのケースです。
LGは,トルコの販売代理店としてDigicomという企業を6年間指名し,取引をしていました。
その後,LGはDigicomとの販売店契約を終了して自ら直接販売する方針へと転換し,契約を解除しようとしたところ紛争になりました。
Digicomは,LGに対し,トルコ商法に基づきのれん代の補償請求を行い4年もの裁判の後,トルコの裁判所はLGに対し約160億円の支払いを命じました。
2012年7月1日施行のトルコ商法では「過去5年間の手数料・利益の相当額を上限とする」補償金の賠償を定めているので,かなり高額です。
したがって,日本企業がトルコで販売店(Distributor)を指名してトルコ進出する際には,契約終了時の補償金を考慮に入れて進出する必要があることになります。
② 登録制度
トルコでは,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を当局に登録しなければならないという制度はありません。
そのため,当局への登録が原因で,旧販売店との契約を解消して新販売店との契約に移行するのが困難になるなどの事情も存在しないといえます。
③ 言語
トルコ企業同士では言語をトルコ語とするルールがありますが,外国企業が当事者になる場合に,販売店契約書(Distribution/Distributorship Agreement)の言語を特に制限する法律はないので,英語などの外国語のみでも契約書を作成することが可能です。
④ 準拠法・紛争解決
トルコでは,準拠法をトルコ法にしなければならないという規制はないため,外国法を準拠法とすることも可能です。
ただし,前述したのれん代(Goodwill)の補償規定に注意して下さい。
なお,トルコはニューヨーク条約加盟国です。
そのため,日本企業とトルコの企業との間の販売店契約の場合,紛争解決については,強制執行の便宜を考え,裁判ではなく仲裁(Arbitration)を選択することが多いです。
以上が,日本企業がトルコ企業を販売店として指名し同国に進出を考える際に最低限知っておいたほうがよい法制度の概要です。
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