オマーンの法制度|販売店契約で注意すべき4つのポイント
日本企業が販売店(Distributor)を指名してオマーンに進出する際は,以下のようなオマーンの法制度に注意したほうがよいでしょう。
オマーンの法制度 早見表
| 販売店の保護 | 商業代理店法が保護。補償金規定は2014年に削除されたが,裁判所が補償を定める余地あり |
|---|---|
| 契約の登録 | 必要(登録により販売店の保護が厚くなる) |
| 言語の規制 | なし(英語でも締結可能) |
| 準拠法・紛争解決 | 外国法も選択可。外国での仲裁により現地法の適用を回避できる可能性 |
こんな方に:オマーン企業を販売店・代理店に指名しようとしている方,オマーン企業から販売店契約のドラフトを受け取った方
① 販売店(代理店)保護法
オマーンには,いわゆる代理店保護法としてCommercial Agency Law(Royal Decree No. 26/77)があり,代理店契約(Agency Agreement)や販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の代理店・販売店を保護しています。これにより,後述するとおり,オマーンには販売店契約の登録制度があり,当局に販売店契約が登録されると,登録されていない場合に比べて販売店の保護が厚くなります。
なお,従来は,登録された販売店契約においてサプライヤーが正当な理由なく契約を終了させたり更新を拒絶したりすると,販売店に対し補償金を支払わなければならないとされていましたが,2014年の法改正(勅令34/2014)によりこの規定(10条)は削除されました。また,サプライヤーが登録代理店を通さずに直接販売することを禁じていた規定(7条)も削除されています。
実務上のポイント:もっとも,裁判所が商慣習等に応じて適切な補償を決定できるとする規定(18条)は残っているため,補償金請求のリスクが完全になくなったわけではない点に注意が必要です。
② 登録制度
オマーンには,販売店契約を当局に登録しなければならないという制度があります。そのため,当局への登録が原因で,旧販売店との契約を解消して新販売店との契約に移行するのが困難になるなどの事情も存在しえます。
もっとも,外国のサプライヤーと現地の販売店が販売店契約を締結する場合に,準拠法を外国法(例えば日本法)とし,仲裁を外国の地(例えば日本での仲裁)としておくことで,オマーン法上の保護の適用を相当程度回避できる可能性があるとされています(ただし,仲裁判断の執行の段階で公序による制約を受けることはあり得ます)。これと異なり,もし販売店契約書で紛争解決を仲裁ではなく外国での裁判(例えば日本での裁判)としている場合,オマーンの裁判所はオマーンでの管轄を認め,オマーン法の適用をする可能性があるとされています。
③ 言語
販売店契約書の言語を特に制限する法律はないので,英文で契約書を作成することが可能です。
④ 準拠法・紛争解決
オマーンでは,販売店契約に関し準拠法をオマーン法にしなければならないという規制はないため,外国法を準拠法とすることも可能です。オマーンはニューヨーク条約加盟国です。そのため,日本企業とオマーンの企業との間の販売店契約の場合,紛争解決については,強制執行の便宜を考え,裁判ではなく仲裁(Arbitration)を選択することも多いです。
前述したとおり,オマーンの裁判所が自国の裁判所に管轄を認め,代理店保護法などの自国の法律を適用することを回避できる可能性があるという意味でも,仲裁を選択したほうがよいと考えます。
オマーンの販売店と契約する前に確認したいポイント
- ✓契約の終了・更新拒絶の際に,裁判所が補償を決定しうることを想定しているか
- ✓販売店契約の登録と,登録によって販売店の保護が厚くなることを踏まえているか
- ✓準拠法を外国法(例えば日本法)とし,紛争解決を外国での仲裁としているか
- ✓紛争解決を外国での裁判としていないか(オマーンの裁判所が管轄を認める可能性)
【ご注意】本記事は,執筆・更新時点において一般的なレベルで調査した結果を参考情報として記載したものにすぎず,個別の案件についての法的助言ではありません。各国の法令・判例・実務は改正等により変更されることがあり,本記事の内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。実際にお取引を検討される際は,必ず現地の法律に精通した弁護士に最新の情報をご確認ください。
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弁護士 菊地正登(片山法律会計事務所)/相談・案件実績 2,931件